青い空と白い雲



 空は青い。青く広く、どこまでも続いている。
 そんな空に白い雲が浮いているのが見える。自由な雲は風に流され、流れのままに身を任せているその様は自由そのもののように思える。


「雲って、自由だと思いますか?」


 空を見上げながらポツリと呟いた言葉。
 言った本人の方に視線を向ければ、その視線は真っ直ぐ空へと向かっていた。同じようにもう一度空の方に視線を向けながら悟飯は答える。


「どうなんだろうね。自由といわれればそんな気もするけど、自由でないといわれればそうも思える」

「結局どっちなんですか……」


 曖昧な悟飯の回答にトランクスはそちらを振り向いた。悟飯もまたトランクスの方に視線を移して、その姿を瞳に映す。


「そういうトランクスはどっちだと思うんだい?」

「ボクは……自由、にも見えるような気がするけど…………」

「それじゃあ人のこと言えないだろ」


 はっきりと言い切れていない様子に悟飯は笑いながら話す。続けるようにして「悟飯さんよりちゃんと答えたと思いますけど!」と言い返す。
 悩んでいるところがありながらも答えを出してはいるのだ。両方を選ぶよりは考えて答えを出したほうだとトランクスは思う。それからもう一度「悟飯さんはどうなの?」と同じ質問を繰り返した。


「浮かんでいるのは自由なんじゃない? 風に流されるのは自由ともいいがたいけど」

「さっきとあまり変わってないと思うんですけど」


 どちらともとれるような回答にやはり先ほどと同じように思う。どちらといいたいのか分からず、けれどもこれ以上聞いても仕方ないようにも思う。聞いたところで、同じような回答しか返っては来ないだろう。
 どうしても答えが知りたいわけではないのでこれ以上は止めておこう。そう思っていた矢先に悟飯は口を開いた。


「答えなんて人それぞれだと思うよ。捉え方の違いだからね」


 その捉え方によってどちらを答えとして選ぶかが変わってくる。たとえどちらを選んだとしてもどちらも正解なのだ。理由が違うだけであって、この答えには模範解答もそれに当たる理論もない。


「でも、オレが答えるなら自由だと思うよ。自然に集まって出来た雲が気ままに浮かんでいると思うから」


 誰かが意図して作ったわけではない。雲自体、自然に出来るものだ。その自然に出来た雲が空という広い世界に浮かんでいる。風が吹いたらそれに乗って流れていく。それは自由という答えになるのではないかと悟飯は考える。
 そんな悟飯の答えをトランクスはただ聞いていた。最初からそう答えればよかったのではないか、とも思うがそれは言わないことにする。今更言っても仕方ないことであり、何より何年もトランクスは悟飯と付き合ってきた。お互い、全部ではないにしても相手のことを分かっている。


「あくまでもオレの考えだけどね。これで文句はないだろ?」

「別に最初から文句なんてないですよ」


 その返答に文句はなくても答えは欲しかったんだろうなと悟飯は思う。どんな答えでも答えというものが欲しい気持ちは分からなくない。
 もう他に言いたいことはなさそうだなと確認すると、悟飯はゆっくり立ち上がる。


「さてと、そろそろ修行を再開しようか」


 悟飯の言葉にトランクスも立ち上がって返事をする。真剣な表情で二人は修行を再開する。
 ふと見上げた空には、広い青の中に幾つかの白い雲が浮かんでいた。










fin