学校お泊り会
発案者は一体誰なのか。
そう問いたくなるようなイベントを発表されたのは今日のHRでの出来事だった。部活の合宿でもなく何の為の合宿だというのか。その疑問の答えは配布されたプリントに書かれていた。何でも勉強合宿らしい。イベント好きな理事長が急に思いついて計画したものだ、とは担任の言葉だ。
「トランクスくん、もう明日だよ」
「合宿なんて面倒だよな」
帰り道。明日行われる合宿について話題を持ち出した悟天。どうしてまたこんな時期に突然、と思うものの理事長が提案したのではどうしようもない。
「勉強するんだってよ。それも学校に泊まってなんて……」
「理事長が言い出したって言うんだからしょうがないだろ」
「そうだけどさ」
勉強が苦手な悟天にとって勉強合宿なんて苦でしかない。そもそも勉強を合宿してまでしたいと思う人は高が知れているだろう。生徒の大半は乗り気ではないと思われる。唯一、合宿に組み込まれているレクが楽しみであるといったところだ。それ以外はずっと勉強漬けなんて正直なところ御免だ。
「なら諦めろよ。学校に泊まる以外はいつもと同じって思えば良いだろ」
「言われてみればそうかもしれないけど」
明日は通常であればいつもの時間割を過ごして一日が流れる。それにプラスで泊まったりレクをしたりするようなもの。トランクスの言うこともあながち間違ってはいないだろう。でも悟天はあまり腑に落ちないような様子だ。
わざわざ泊まってまで勉強をしようとはどういう意図があってのことだろうか。プリントには生徒の学力向上と交流目的と書かれていた気がする。後者はレクなどでという意味だろう。理事長もどうしてそんなことを思いついてしまったのか。
「そんなに嫌なら理事長に言えよ」
「無理だよ」
「だったら諦めろ」
いくら勉強合宿が嫌だからといっても理事長にまで講義に行く気にはならない。それ以前に理事長にそんなことを言えるはずがないのだ。
「なにも全部勉強じゃないだろ。レクだってあるんだからそれでも楽しめばいいじゃん」
勉強時間はいつもの授業と同じようなものだ。他はレクを生徒会が中心になって行うらしい。悟天の性格ならレクが始まればすぐに楽しんでいくだろうとトランクスは思う。今の悟天は勉強の方で頭が一杯のようだけれども。
「レクは楽しみだけど」
「それなら良いだろ。別にテストってわけでもないんだからさ」
「え、テストはないの?」
「分からないけど定期試験でもないし、全部の教科であるわけじゃないと思うけど」
そうなんだ、と答える様子からして悟天は全部テストをするとでも思ったのだろうか。プリントにはそのようなことは一言も書いていなかったはずだとトランクスは思い返す。実際、学力向上が目的で勉強合宿をするとは書かれていたが、テストをするとは一切書かれていない。
この様子だとテストばかりの合宿だと勘違いしていたらしい。それでも勉強するための合宿など嫌でしかないのは変わらないだろうけれど。テストではなく授業だというのならマシである。
「そうだったんだ。ボク、てっきりテストをやるのかと……」
「どこにも書いてないからプリント見ろよ。だからいつもと同じだと思えって言っただろ?」
「うん。まぁ、そうだよね!」
どっちにしたって明日には行われるものなのだ。嫌だとばかり思っていても仕方のない話である。この際、勉強するという点に関してはいつもと同じだと割り切ってしまうのが一番だろう。
「レクって何するんだろうね」
「さぁな。生徒会じゃないからな」
勉強合宿とはいえ、どうせなら楽しいことを。勉強の後に行うレクを生徒会はどんなものを考えているのだろうか。生徒達を盛り上げるものであることは当然だろう。勉強から開放されてのレクなのだ。一体、どんな時間になるのだろうか。
ただ勉強するのではなく、みんなで一緒に盛り上がって楽しんで。そんな合宿にするためにも色々と考えていてくれることだろう。生徒会とは立派なものだ。
「ご飯とかもどうなるんだろう」
「カレーが可能性として一番高いんじゃないか?」
「あーそうかも」
そんな他愛のない会話を繰り広げる帰り道。
合宿はもう明日に迫って。勉強に交流を目的として目前までやってきている。
さて、明日はいよいよ勉強合宿が始まる。
fin