今日も賑わっている木ノ葉隠れの里。人が行き交う里の中、一際目立つその色を見つけて声を掛ける。


「ナルトー!!」


 自分の名前が呼ばれて立ち止まる。振り返ると、聞きなれたその声の主の姿を探す。すると、人の合間を縫ってこちらに向かってきている人を見つけた。


「意外と早く帰ってきたわね。予定では、今日の夜じゃなかった?」

「予定ではそうだったけど、早く終わったんだってばよ」


 いのの質問に答えながらナルトはニコっと笑う。
 ナルトは数日前に任務へと出掛けた。長期任務というほどの長さでもなく、予定では今夜帰ってくることになっていた。いのもそう聞いていたのだが、どうやら任務は早く終わったらしい。多少の前後はあると思ったが、夜ではなくこんな昼間に帰ってくるとは予想外だ。


「なるほどね。それで今帰ってきたわけね」

「そういうことだってばよ。いのは、買い物?」

「そうよ。アンタが今日帰ってくるって聞いてたから」


 今夜に帰ってくるという話を聞いていて、それならばもしかしたら今日、会えるかもしれないと思った。もし今日会えなかったとしても、明日には会うことが出来るはず。それなら任務で帰ってきたナルトに何か作ろうと思って買い物のためにここまでやってきていた。
 そうしたら、偶然にも任務から帰って来たナルトに会った。それで今に至っているというわけである。


「それって、オレのためってことだよな?」


 確認するようにナルトが尋ねる。改めて聞かれて、いのは頬を少しだけ染めながら「そうに決まってるでしょ」と答えた。そうでなければ、わざわざ買い物になど来ていない。
 いのの言葉にナルトは嬉しそうに笑う。自分を待ってくれていただけでも嬉しいが、それに加えて自分のために料理まで作ってくれようとした人がいる。そのことが嬉しくて仕方がない。待っていてくれる人がいるというのは、こんなにも幸せなことなのかと思う。


「へへっ、嬉しいってばよ。ありがとな、いの」


 ナルトはいのにお礼を言う。あまりにも嬉しそうな笑顔にいのもつられて笑う。喜んでくれればいいなとは思っていたけれど、料理を作る前にこんなにも喜ばれるのは予想外だ。そんな予想外の出来事にいのも嬉しくなる。


「任務を早く終わらせて正解だったってばよ。少しでも早くいのに会いたかったからさ」


 突然の告白にいのの頬はさっきよりも赤く染まる。
 任務が早く終わったのは、ただの偶然だとばかり思っていた。それなのに今、ナルトは早く終わらせたと言う。それもいのに会うために。任務を早く終わらせようと努力していたナルトを想像して口元が綻びる。ナルトも早く会いたかったと思ってくれていたことが、どうしようもないくらい嬉しい。


「アンタね、よく道端で堂々と言えるわね」


 自分でも分かるくらいに赤くなった頬。それが恥ずかしくなって、顔を逸らしながらそう言った。
 けれど、ナルトは全く気にした様子もない。更に「本当のことだから」なんて言ってくるものだから、余計に顔に熱くなるのを感じる。人がたくさんいようがいまいが関係がないとでもいうように、はっきりとした言葉で伝える。
 そんなナルトの態度に、嬉しくて周りなど気にすることなど忘れてしまいそうになる。けれども、ここは人の行き交う里の中心部。こんなところでいつまでも自分達の世界に浸っているわけにはいかない。そう思って、いのは口を開いた。


「ナルト、今からアンタの家に行ってもいい?」

「勿論だってばよ!」


 最初から行くつもりだったけれどここで確認しておく。それに考える間もなく即答で返すナルト。悩む時間など必要ないということだろう。考えなくても答えは最初から決まっているのだ。
 きっと、予定通りの時間に任務が終わって夜にいのがナルトの家を訪ねたとしても、ナルトはすぐにいのを家にあげただろう。ナルトがいのと二人で過ごせる時間を拒むことはないのだ。むしろその逆で、少しでもその時間を長くしたいと考えているのだから。


「じゃぁ、早く行くわよ」

「おう!」


 一分でも、一秒でも。ほんの少しだけでもいい。
 二人で過ごせる大切な時間が長くあること。そう願って二人は里の中を並んで歩き出した。その時間も二人にとっては大切なもので、自然と歩調は一緒に真っ直ぐナルトの家に向かって歩いて行った。

 アナタのことが好きだから。少しでも長い時を共に過ごしたいと、ずっと一緒にいたいと。そう、思う。
 誰よりも好きな大好きなアナタだから。

 これからも永遠に、一緒の時を刻んでいこう。









fin




「ぼくたちの砦」のコルリ様に差し上げたものです。少しでも長くいのと一緒にいたくてナルトは任務を早く終わらせたようです。家についてからは仲良く二人だけの大切な時間を過ごしたことでしょうね。