「なぁ、幽霊とかお化けとかって信じるか?」
夏の噂
時刻は昼休み。いつものメンバーで屋上で昼食を食べていたところで、突然そんな話を持ち出したのはキバだった。
「どうしたんだよ、急に」
「まぁいいからさ。んで、どうなんだよ?」
シカマルの質問も気にせずに、早く答えをとでも言うかのようにして話す。その様子に、とりあえず答えるのが先かと溜め息を零す。その簡単な質問に対して返答するまでの時間はあまり要さなかった。
「いねーんじゃねぇの。所詮、空想のもんだろ」
否定の言葉を返すと、同意見だとサスケやナルトも頷く。けれど、キバは「本当に?」と確認するかのように聞き返す。どうしてそこまで聞くのかと思いつつもとりあえず肯定を返す。
すると「やっぱそう思うのか」と呟くようにして言う。まるで信じると答えて欲しかったかのようにも聞こえる言葉に疑問を浮かべる。
「どうしたんだってばよ。何かあんの?」
疑問をそのまま口にしたナルト。その疑問の答えはすぐに返された。
「それがさ、この辺に心霊スポットっていうか、お化けが出るって噂の場所があるの知ってるか?」
お化けや幽霊が出るという噂。それは夏になるとよく聞くようなあれだ。怖い話をして涼しくなるわけではないが、そういう話をするのはこの時期が多いだろう。それに伴ってとでもいうのだろうか。どこでもお化けが出るらしいというような話も出てくるのである。
どうやらキバが言いたいのもその一つのようだ。学校である生徒が話しているのを偶然聞いて、その事を知ったらしい。お化けを信じるわけではないが、それが気にならないわけでもないということだろう。
「くだらねぇ。どうせ噂の話だろ」
お化けも信じないが噂も信じる事はないとでも言うようにサスケは言う。それにシカマルも同意見らしく「そうだな」と続ける。この二人は元からこういうことに興味も持たなければ信じる事も少ないというタイプなのだ。最初から予想していた答えなだけにキバの切り返しも早い。
「どうせ噂って言っても実際分かんねぇじゃん。だからさ、行ってみねぇ?」
好奇心によって生まれた発言。お化けや幽霊の類の話に真実なんて物はないに等しいが気になるものは気になる。そういうものに興味がある人が居るからこそ現にこんな噂が流れているのだ。遊び好きで好奇心旺盛なキバが聞けば、行ってみようという結論にたどり着くわけだ。その考え方はナルトも場合でも殆ど変わらないだろう。
しかし、キバの提案にナルトはすぐに返事をしない。いつもなら決まった言葉での返答がある。シカマルやサスケにおいては面倒だくだらないなどと言って最終的に強制参加という結果が多い為にあまり気になるものでもない。
「んなもん無駄だろ。めんどくせー」
居るはずがないのに行っても何の得にもならない。もしもそこにお化けや幽霊が居たとしても得になる事なんて何一つないだろうが。無駄なことをあえてやりたいなどと面倒くさがりやのシカマルが考えたりはしない。シカマルの言葉に続いてサスケも同じような意見を言う。
「同感だな。噂以前にそんなものが居るはずがない」
お化けや幽霊などどこかの話に出てくるレベルのもの。この世の中に実在しているならそれこそ目にした事のある人など多いだろう。目にした事がある人が少なくそれも事実かは分からないからこそ、こうした噂話になっているのだ。
サスケの言う事もシカマルの言う事も正論だ。だからこそそれを全部聞き入れていたら何も出来ない為に強制参加という手段になるわけだが。
一方、まだ何も答えを返さないナルトに「ナルトは?」と尋ねるが何を考えているのか返答がない。その様子にキバはからかいながら答えを求める。
「もしかして、お前。お化けが怖いっていうタイプか?」
「ち、違うってばよ!」
その言葉を聞いてすぐに返すもののその反応は明らかに正しい答えを示していた。意外な事を偶然知ってしまって、それを放っておくようなことをキバはしない。
「本当は怖いんだろ?」
「怖くねぇってばよ!!」
「だったら行ってみようぜ。その場所に」
改めて言われた提案に言葉が詰まる。それを見ながら「それとも怖くて行けないのか?」とキバが聞けば「行ってやるってばよ!」と勢いよく返してくる。これでナルトの参加が決まった。
そんなやり取りを見ていた二人は、やっぱりこうなるのかと思っていた。こういう話になって、ナルトが行かないと言うはずがないのだ。次のキバの言葉は予想していた通り、サスケとシカマルの二人も参加するというものだった。
今夜八時、高校の前に集合。絶対に遅れるなと言われ、学校から帰ると時間を意識する。
夜になり、再び四人がこの場に集まった時。
それは新たな冒険の始まり。
fin