青い空、白い雲。今日の天気は文句の言いようがないくらいの晴れ。こんなにも天気がいいと体を動かしたいとさえ思う。そんな晴れの日だ。
聞こえてくるチャイムが、いつもと変わらない学校生活の始まりを教えてくれる。
変わらぬ日々
「あと少しで決着ついたのに……!」
昼休み。こっそり入った屋上での会話。本当はいけないことだが、見つからなければ問題ないという考えだ。そういう考えがないのなら、そもそもこんな見つかったら危険な場所に居たりなどしない。
いつものメンバーで昼食を食べながら、ナルトが話すのはさっきの体育のことだ。このクラスは四時間目に体育があり、今日はバスケの試合をしたのだ。
「仕方ねぇじゃん。チャイム鳴ったんだし」
「それでも、あと少しだったんだからさ……!」
何をそんなに言っているのかといえば、そのバスケでのことだ。あともう少しで追い付き、逆転できるところだったのだが、授業の終わりを知らせるチャイムによって試合はそこで終了。ナルトのチームは結局負けることになったのだ。
時間がきてしまつのだから仕方がないとはいえ、ナルトはどうも納得出来なかった。試合時間がなくなったのならまだしも、授業の終わりで強制終了。ナルトとしては、少し終わりが遅くなってもやりきりたかったのだ。
「いつまで騒ぐつもりだ。もう終わったことだろ」
サスケがそう言えば「そういう問題じゃねぇ!」と反論する。全く、いい加減にしろというのはサスケの意見。それに全然気付かない、というより気付こうとしないナルトの話はまだまだ続く。
「だってさ! あそこでオレがシュート決めれば同点だろ? 残り時間あったんだから逆転も出来たのかもしんねぇのに」
そう。あの時、チャイムがなる直前までナルトはボールを持っていた。いざシュートを決めようと思った瞬間、チャイムの音が聞こえてきたのだ。残り時間もまだ少し残っていたのだから、ナルトのいうように逆転の可能性もあったのだ。
そうはいっても終わりは終わり。今更どうこう言っても仕方ないわけでもあるのだ。そんな話をいつまでも聞かされたくないと思うのも無理はない。
「もう諦めろっつーの。そんなこと言っても変えられねぇんだからよ」
話を聞きながら答えとして出すのは皆同じようだ。キバにサスケ、シカマルの三人は、言葉は違えど同じことをナルトに言っている。この場には四人しか居ないが、もし教室でこの話をしてもほぼ全員と言っていいほどサスケ達の意見の方に頷くだろう。
諦めきれないナルトが「でも」と言い出すけれど、でももなにもないと一喝されてしまえば何も言えない。終わってしまったことだと、分かっているわけでもあるからだ。
「あーあ。今度は授業が延びてももいいからやらして欲しいって言おうかな」
「そんなこと言ったらクラスの大半の反感を買うことになるぜ?」
「……それは嫌だってばよ」
いくら試合を続けられたとしてもそれは遠慮したい。きっと試合をやりきりたいと言えばあの先生ならしてくれなくもないだろうとは思う。思うけれど、クラスの反感を買えばその後どうなるのかなど想像したくもない。そんなことになるくらいなら、大人しく時間に従った方がマシだろう。
それなら諦めろと言われ、渋々ながら納得することにする。どれほど試合の決着がつけたくてもクラスの反感を買うほど恐ろしいことはない。それが四時間目の授業であったならチョウジに、その時間でなくてもサクラや誰かしらに何かされるだろうことは予想出来てしまっているのだ。
「ナルトでも諦めることあるんだな」
「オレだって、どうしても無理な時は諦めるってばよ」
「どうしても無理って言うより、何かされるのが怖いんじゃねぇの?」
「ウルセー」
誰にだって怖いものの一つや二つくらいある。こんな風に言ってくるキバだって、もしそんなことを頼んだ場合の様子など十分想像出来ている。分かっていながらもナルトにわざわざ言ってきたのだ。それならば言わなくていいと思うのだが、この二人はこんなやり取りが度々あるのだから何ともいえない。今回はキバからだけれど、逆にナルトからということもある。からかい合うのも二人にとっては楽しいことの一つだ。
「でも、次こそは絶対勝ってやるってばよ!!」
今回は結果的に負けだった。けれど、それだけで終わりになど出来ない。次は必ず勝つと宣戦布告する相手などナルトにとってはこの学年で、このクラスでたった一人。もっとも親しい友であり、ライバルでもある彼しか居ない。
「次もオレが勝つに決まってるだろうが」
「オレは負けないってばよ!」
昔よりは随分と喧嘩も減ったこの二人だが、勝負事になれば話は別。相手へのライバル心からかお互いに負けたくないらしい。そういうところは昔と全く変わっていない。
そんな風に思うキバやシカマルだけれど、それがこの二人らしいことだと思う。今でも時には喧嘩をするが、また始まったと思う半面でこいつ等らしいとも思っていたりする。同じように、この二人の勝負事に付き合わされて面倒なことになるのは嫌だけれど、その勝負を見ているのは面白かったりもするわけで。ナルトとサスケはこういう関係が一番なのだろうと思う。
「さてと、もうチャイムなるぜ? 早く戻らなねぇと教師が五月蝿いからな」
「だな。とっとと戻ろうぜ」
ゆっくり立ち上がると屋上を後にする。
教室に戻りながらも他愛のない話を繰り広げる。ナルトとキバの二人で盛り上がって、その後ろでサスケとシカマルも歩いている。時々話を振られれば適当に返したりしながら。この短い時間も充実させている。
この青い空の下。大切な仲間と一緒に過ごす生活。
友とライバルと親友と。一緒に笑って泣いて、共に過ごす大切な時間。
そんな楽しい日々がこれからもずっと続いていきますように。
fin