夏の計画
夏。太陽が顔を出せばすぐに気温が高くなる。青空の中に浮かぶ白い雲はくっきりとしていて、夏らしい気持ちの良い天気だ。
「夏休み、どっか遊びに行かねぇかってばよ?」
学校のチャイムが鳴り終わり、初めに口を開いたのはナルトだった。明日から待ちに待った夏休みだ。
「そうだな。せっかくの夏休みだもんな!」
「だよな!!」
ナルトの意見にすぐに食い付いたのはキバ。二人共、騒いで遊んでということが好きなのだ。この夏休み、どうせなら楽しく過ごしたいというもの。それならば、みんなで出掛けるのが一番だろうという結論に辿り着く。
ただ、みんなで出掛けようと話しても全員が全員賛成してくれるわけではない。現に嫌そうな顔をしている仲間もここにいる。
「お前等が夏休みにどこに行こうが勝手だが、宿題もやっておけよ」
その言い方からしても自分は全く参加をするつもりがないらしい。サスケは、ナルト達とは違ってみんなで騒いだりということがあまり好きではない。どちらかといえば一人で静かに過ごしていたい方なのだ。
こうして助言をするのも、宿題をやらずに最後になってから見せて欲しいと頼んでくる目の前の金髪を知っているからだ。毎年のように同じ繰り返しで、学習しないのかと思うものも変わらずにもう何年経っただろうか。
「何だよ。サスケは行かないのかよ」
「オレはいい」
「そんなのオレがよくないってばよ!」
何て自分勝手なんだと言いたくなるがこれもサスケにとってはお馴染みの会話だ。幼馴染のナルトとサスケは、今までどれくらいこのようなことを言ったのかなんて覚えていない。この場にいる仲間達も付き合いが長いメンバー達なので、このやり取りも見慣れたものだ。
そして、これからどう話が展開されていくかも大体予想できる。いつも最後は同じなのだから。今回もそうだろうというのが周りの考えだ。
「行きたい奴だけで行けば良い話だろ」
「だから、オレはみんなで行こうって言ってるんだってばよ!」
「こっちにだって拒否権はある」
「そんなのつまんねーじゃん。全員参加な!!」
はい、決定。と言ってナルトは声を上げた。
拒否権はどこにいったのか。ここの会話の中にそれは存在しないのだろう。サスケは溜め息を一つ吐いた。
「毎年変わらねぇな、お前等」
「あのウスラトンカチがいつも強引なだけだ」
「めんどくせーけど、決まっちまったもんはしょうがねぇな」
出掛けることが決まり、どこに行こうかと話し合う声が聞こえてくる。こっちが良いんじゃないかとか、これの方が楽しそうだとか。パンフレットを出している辺り、最初からみんなで出掛けようと決めて準備してきていたのだろう。
一歩離れたところから見ているサスケやシカマルも面倒だ何だと言っても結局は毎年付き合っているのだ。やはり友達であり、大切な仲間なのだ。
「あ、サクラちゃんたちも行くよな?」
帰る支度をしていたサクラやいの、ヒナタに声を掛ける。彼女達もここにいるメンバーは小学校からの付き合いだ。高校に入ってから出掛けようという時には、大体そのメンバーで行っている。中学時代もお祭りがあったりと何かあればみんなで行ったものだ。
尋ねられたサクラは、集まっているメンバーで何の話をしているか予想できたのだろう。一緒にいたヒナタやいのも同じ考えだったらしく、ナルトたちのいる方に集まる。
「今年もどこか行くの?」
「そうそう。海にしようかって話してたところだってばよ」
机の上にあるパンフレットを見て「楽しそうね」とその一枚を手に取った。続けて「私たちも行くわ」とニコッと笑った。お馴染みのメンバーの全員参加が改めて決まり、ナルトは嬉しそうに笑う。
「こことかどうかな?」
「それよりもこっちの方が良くない? 電車で行くのにも海に行くにも丁度良いと思うわよ」
「ナルト、ちゃんと考えて探せよ」
「分かってるってばよ!」
沢山あるパンフレットに一つずつ目を通す。どうやらそれ自体は適当に集めてきたものらしい。あまりにも遠い場所はないがその内容はさまざまだ。海以外にも遊園地などの施設が載っているものもあるようだ。
あれこれと話している様子を見ていると、ここに決まりだという声が聞こえる。その声を合図に、少し離れたところで見守っていた人たちもそこに集まる。
「そういや、去年も海じゃなかったか?」
「だって、夏といえば海だろ!」
「その考えはどこからきてるんだ」
「夏だからだってばよ」
「アンタ、それ答えになってないわよ」
「海の家では美味しいものたくさん食べれるし、良いんじゃない」
一枚をみんなで覗きながら、口々に意見を出す。なんだかんだでみんな楽しそうだ。
白い浜辺の先に広がる海。海の家も当然経営されていて、チョウジはそこが一番の目当てのようだ。ビーチバレーに海に入って水遊び。色々な楽しみがそこには溢れている。
「とりあえず、そろそろ学校出た方が良いんじゃねーか? 時間も時間だしよ」
「それもそうよねー。もう私達以外帰っちゃってるもんね」
各々の鞄を持つと、また夏休みの計画の話を再開する。その流れで、昼飯はどこかで適当に食べて計画をしっかり立ててしまおうということになる。自転車の鍵を開けて道路を走り出す。
青い空、白い雲。その下に広がるオレ等の世界。
広大な海に行くことを楽しみに、次々と言葉が交わされる。
夏休みが始まる。
fin