行事といえば、入学式や卒業式といったところだろうか。盛り上がるイベントといえば、学園祭や修学旅行のようなものだろう。
 さて、今度の行事は。






「お前等も来月に宿泊合宿があることは知ってるでしょ? その説明のプリントがソレ。で、概要は見てくれれば分かるから」


 プリントを配り終えると、簡単な説明をカカシはする。そのプリントを見れば、確かにそこに説明は書かれているが担任がこれで良いのかという疑問がないわけではない。
 だが、カカシのクラスになったことのある者からしてみればいつものことである。カカシは必要最低限のことしかしない。というよりは、大半をクラス委員に代行して貰っているともいえるが。クラス委員からすれば、迷惑でしかない話だ。


「部屋割りとかも決めなくちゃいけないから、後は宜しくね」


 別のプリントを合宿委員に渡すと、もう何もやらないとでもいうようにクラスの端に置いてある椅子に腰を掛ける。文句の一つも言いたいところだが、言っても無駄なことは既に承知済みだ。
 溜め息を吐くと、ゆっくり席を立つ。それから他の委員に視線を送れば、一緒に前へと移動する。


「とりあえず、決めるのは部屋割りみたね」

「そうだな。あとは、ソイツ等で決めることだもんな」

「じゃあ、部屋割りを決めるってばよ!」


 前に出てそこに書かれている項目を見ながらサスケとサクラが納得する。それにナルトが進行するべく声を上げた。この三人が合宿委員なのは、先日行われたクラスでの話し合いでのことだ。
 決める際に、不本意でありながら推薦された故にクラス委員をしているサスケに、カカシがそのまま合宿委員もと任せたのだ。それと同時に、同じくクラス委員であるサクラも一緒にやることになった。ナルトはといえば、話の流れからカカシによって任命された。つまりは、カカシによって三人ともこの委員をやることになったのだ。


「どうやって決めるかが問題よね」

「え、自由が良いってばよ! せっかくの合宿なんだし、好きな奴と一緒になりてぇじゃん!」


 委員であるとはいえナルトはナルトである。意見があればそのまま言う。だが、それは委員だけで勝手に決めて良いものでもない。


「それはクラスの奴にも聞いてからにしろ、ウスラトンカチ」

「どうせみんな自由が良いに決まってるってばよ!」

「アンタね、決まってはいないと思うわよ」


 おそらく大半は自由を希望するだろうと予想は出来るとはいえ、決まっていることでもない。サスケやサクラの言う通り、一度クラスに意見を求めるのが良いだろう。
 ナルトが「自由が良いと思うよな!」とクラスメート達に尋ねれば、案の定、大方の人が賛成する。声を上げなかった人も決め方はどういう方法でも良いらしく、反対する者はいないようだ。


「んじゃ決まりだってばよ! 好きな人同士で集まって決めるってばよ」

「部屋は各八人ずつで、決めることは黒板に書いておくから」


 そこまでの説明を終えると、みんな席を立って自由に移動をする。黒板には部屋長を始めとした役割が書かれる。これが部屋のメンバーが決まったらその中で話し合う内容だ。
 合宿委員である三人もそれを書き終わるとそれぞれ自分達も部屋のメンバーを決めるために教卓から離れる。いつもの仲間が集まっているのを見つけると、そこに加わることにする。


「戻ってきたな、合宿委員」

「おう。もう役割とか決めたのかってばよ?」

「お前等いなかったからまだ決めてねぇぜ。全員役割あるとか、めんどくせーな」


 部屋長から副部屋長。それに食事や美化といった役割がある。それは上手い具合に全員が何かしらの役割を持つようになっているようだ。一人や二人ぐらいは係りがなくても良いのではと生徒は思うものの教師側はそうはさせてはくれないらしい。


「それならどうするんだ」

「オレってば楽なのが良いってばよ」

「お前は委員だから、どうせ集められたりするだろうけどな」


 それを聞いたナルトは、驚いたように「マジで!?」と言っている。委員なのだから当たり前だろとサスケは返す。それも委員になってしまったのだから、仕方がないことというわけだろう。元々、やりたくてやっているわけではないのだから、集合させられるのはあまり嬉しくない。というより、面倒なので嫌であるという方が分かりやすいだろう。


「で、結局どうするよ? ナルト、お前ついでだから部屋長でもやっとけよ」

「絶対嫌だってばよ! それならキバがやれば良いじゃん」

「オレだって御免だぜ。委員やってるんだから変わんねぇだろ」

「変わるってばよ。仕事増えるだろ!?」


 どうせ委員で集められるとはいえ、それを好んで増やそうとは思わない。増やしたくもない。部屋長と委員をとなれば大分変わるものだ。
 そうはいっても誰かが部屋長をやらなければならないのも事実だ。どうするかという話に視線は一点に集まる。


「お前等……」


 視線に気付いて小さく呟いた。声からしても明らかに嫌そうだ。
 けれど、どうせ誰かがやらなければならない。それならば適任者を選ぶのが良い。それで、視線が自然と一つに集まってしまったのだ。ここにいる全員が適任だと思う人物に。


「このメンバーじゃ、サスケが一番適任だろ」

「オレの意見はどうなる」

「よーし、それじゃあ他の係を決めるってばよ!」

「おいウスラトンカチ、勝手に話を進めるな」


 ナルトの勝手な行動に文句を言うものの「だってサスケが一番だし」と答えてさっさと他の係を決めようと話し出す。それにサスケは溜め息を一つ吐いた。ここに集まっているメンバーは昔から知っている仲間達だ。サスケもそうなることを薄々感じていただろう。


「頑張れよ」

「全く、たまには他の奴がやれば良いだろ」

「お前が適任だろうしな。まぁ、みんなめんどくせーからっていうのもあるだろうけどよ」


 そんな話をしている間にも係はどんどん決まっていく。部屋長さえ決まればあとは適当にぱっぱと決まってしまったらしい。
 このグループの話が終わる頃には、丁度他の班も係を決め終わったようだ。それから時間を見計らったかのようにチャイムが鳴り響いた。

 宿泊学習はもう暫く先のこと。
 一体どんな合宿が待っているのだろうか。










fin