なあ、知ってるのか。オレがどんな風に思ってるのか。どんな気持ちなのか。
 多分そんな事気付いてもいなければ気にしてもいないかもしれないけれど、本当のオレの気持ちは…………。








「それならどうすればいいんだってばよ」


 今、この場所で起きていること……なんてていってもそれほど大げさな話ではない。ただ、今オレが居る場所はオレの部屋で、そこに居るのはオレのクラスメイトであるサスケの二人だ。オレとサスケは向き合うような形で座っている。


「どうするも何も、さっきから言ってるだろ」


 どういう状況かといえば、話し合いをしてるとでも言えばいいだろうか。サクラちゃんとかからすれば、またいつもの言い争いかって思われるかもしれないけど。でも、これは話し合いだ。
 今日の学校が終わって、そのまま一緒にオレの家までやって来た。もう今となっては珍しい事でもなく、いつもの事だ。ただ違うといえば、今日はこうして話し合いをしているという事ぐらい。


「だから、それは無理だって言ってるってばよ」

「無理じゃない」


 さっきからずっとこんな感じ。オレは無理だって言うんだけど、サスケは無理じゃないって言うんだ。
 何がっていうと、今度のテストの事だ。オレはいつもテストの点が悪くて補習を受けたりとかしなくちゃならない。だから次のテストではそんな事がないようにしようっていうんだけど今更どうすればいいのか。勉強するのだって好きじゃないというのに無理がある話だ。


「無理だってばよ。出来るワケねぇじゃん」


 テストで点を取るには勉強をしなければいけない。他に方法なんてない。サスケは勿論勉強をするように言ってきた。ついでにいうと、その勉強を見てくれるとも言ってくれた。
 だけど、オレは勉強が嫌いで勉強なんてしたくもないしどちらかというと遊びたい。学生としてどうなのかって言われてもオレは学校に遊びに行っているようなものだ。


「やれない事はないだろ。何でも無理って言ってたらキリがない」


 確かにサスケの言う事も一理ある。あるんだけど、それを聞いて素直に出来るわけがない。だからこういった状態になってるわけでもあって。この状態は一体どれくらい続いているんだろうなんて考えても答えが見つかるわけじゃない。


「けどさ、サスケだって知ってんだろ? 短い付き合いでもないんだし」

「知ってる。だから言ってるんだ」


 さっきからサスケは勉強すればいいって言う。テストで点を取るには勉強すればいいことぐらいオレにも分かってるけど無理なんだ。オレがやらないだけとかじゃなくて、実際に無理なものは無理。
 でも、サスケは一歩も譲ろうとしない。サスケとの付き合いっていうのは、さっきも言ったけど短いものではない。どちらかといえば長くて幼稚園の頃からだ。だからオレの成績も知ってれば性格だって知ってる。オレだって同じようにサスケの事を知ってるわけでもある。そんなサスケが言うのには、何か意味があるのだろうか。


「サスケはさ、何でそんな風に言うんだってばよ?」


 ずっと気になっていた疑問を投げかける。次のテストで点を取るっていうのは、いつも点数が悪くて補習を受けたりしてるからだ。仕方ないとか言ったら努力をすればいいだけの話だって言われたのは数分前の出来事。たまには勉強して点を取れって言われて、それが出来ないって話から今に至っている。


「お前だってやれば出来ると思ってるからだ」


 はっきりと言われた言葉。それに驚きながら、どうしてそこまで思うのかって別の疑問を抱いた。
 だって、急にそんなことを言われてもどうしてって先に思うものだろ? そう言われる事は、まぁ嬉しいんだけどさ。それでも疑問も生まれちゃうわけで。そのまま「どうしてそんなこと……」って聞いてみたらサスケは小さく笑って答えを返してくれた。


「さっき言っただろ。長い付き合いだし、それくらい分かる」


 聞いて、さっき自分が言った事を思い出した。オレもサスケも互いを知ってて、それを知った上でサスケはオレに言っていた。そう思うと、また嬉しさが増す。今までの言葉も全部サスケはオレの事を知った上で言ってくれていた。それが心の底から嬉しいなんて思ってしまう。


「だからお前は出来ると思う。やれないわけがないともな」


 言われた言葉は、オレ自身を安心させてくれるような、本当に出来るんじゃないかって思わせる。何かの魔法のような言葉はそのままオレにかかる。
 否、それは魔法なんかじゃないのかもしれない。魔法とかじゃなくてもっと大きなもの。言うなら、オレとサスケの友情や繋がり、絆から。お互いの事を知っているからこそ、それだけ知っている相手だから。誰よりも大切な存在であるサスケが言ってくれたからそう思えるんだ。


「それで、ナルト。お前はどうするんだ?」


 確認するかのように聞いてくる。浮かべられた笑みに、自然と笑みを浮かべてしまう。あえて確認するあたりがサスケらしい。そのサスケにいつも助けられるのはオレの方。
 でも、そんなサスケが好きだとか思ってるのもまた事実。サスケに好きだと言われて、嬉しくてオレも同じ気持ちだって気付いて。大切な人っていうのは、オレにとってもサスケにとっても互いの存在なんだ。


「やってやるってばよ!」


 自分の決めた事は曲げない。やると決めたならちゃんとやりきってやる。それが嫌いな勉強でも必ずやりとおしてみせる。今回はサスケも一緒なんだ。だから、絶対に負けないんだ。

 勉強は嫌いだけど、サスケと一緒にならやれるかもしれないとか思うオレは都合がいいのかもしれない。本当に都合はよくてサスケと一緒に過ごせる時間が楽しみだとか、一緒に居られない事を考えたら嬉しいとか思ってるのも事実だったりする。サスケはそんな事を思ってないかもしれないけど、オレはそんな風に思ってるんだ。
 オレが思ってるのと同じようにサスケが一緒に過ごせる時間を、その内容が勉強だとしてもその時間が嬉しいと思ってる。それをオレが知るのは一緒に勉強を始めてからの話。

 同じ気持ちだったと知って驚くのと、恥ずかしいと感じるのと、嬉しいと思うのと。オレ達は、どんな気持ちになるのだろうか。
 どんな気持ちもそれは互いに相手の事が好きだから。









fin




「和泉屋」の小川ちや様に差し上げたものです。テスト勉強をしようというサスケとどうせ無理だからやらないというナルト。
だけどサスケの話を聞いていくうちに気が変わっていって、一緒にテストに向けて勉強をする事にしたようです。テストは一体どうなったのでしょうかね。