チクタクと時を刻む時計。ふと確認するように視線を向ければ、時刻はあと数十分もすれば日付が変わる。日付が変わると同時に新たな年を迎える。今日は大晦日。
 学校は数日ほど前から冬休みに入っている。宿題も出てはいるけれど、夏休みほど多くもないのでそれほど心配することはないだろう。もうすぐ年を越すというこの日、ナルトはサスケの家にやって来ていた。二人は、両親が海外に出ているということで一人暮らしをしている。元々幼馴染ということもあり、どうせなら一緒に過ごそうということになったのだ。


「今年ももうすぐ終わるんだな」


 一年の出来事を思い出しながらぽつりと呟く。
 この一年も色々なことがあった。高校二年目の今年も合宿やら学園祭と楽しいこともあれば大変なこともあった。けれど、毎日楽しい思い出ばかりの日々だったように思う。そんな一年も残りわずか。
 クラス替えがあったけれど、どういうわけかまたこの幼馴染とは同じクラスになった。もしかして裏で誰かが影で仕組んでいるのではないかと思うくらいの連続記録更新中だ。とんだ腐れ縁である。


「一年間、色々あったよな」

「お前と一緒だったせいで余計なこともやることになったけどな」

「そんなこと言うなってばよ」


 いつもナルトと一緒になり、その度に面倒なことに巻き込まれる。それは今年も例外ではなかった。
 勿論、それらをしっかりこなしてきたわけだがこのクラスになった以上、それも仕方がないことだろう。付き合いの長い友人達ももう諦めている。最初こそ面倒だと文句を口にしていたものの今となってはそれが普通になっている。日が経つというものはそういうものだ。


「そういうお前はどんな一年だったんだよ」

「オレは新しい友達も出来たし楽しい一年だったってばよ」


 また同じクラスになったメンバーもいれば、今年初めて同じクラスになった友達も何人もいた。みんな今では大切なクラスメイト、この一年を共に過ごしてきた仲間だ。迷惑をかけたりかけられたり、それも良い思い出の一つだ。
 思い返す度に今年の出来事が次々と頭に浮かぶ。始業式にいきなり遅刻したことから始まり、勉強のための合宿なんて嫌だと担任に抗議をしてみたり。当然合宿は行われ、勉強をしつつも夜は騒いで怒られ。昨年よりも慣れた学校生活は今年も楽しい日々を送ることが出来たといえるだろう。


「サスケだって楽しかっただろ?」

「一応な」


 そんな返事をすれば「一応ってなんだってばよ」とナルトが笑っている。
 クラス委員や生徒会と大変なことも確かにあったけれど、それだけ楽しいこともあった。こんな言い方をしていてもサスケだってなんだかんだで楽しかった思っていることは、長い付き合いであるナルトには分かっていた。それを素直に言わないのがサスケなのだ。

 いつの間にかあと数分もすれば日付が変わる時間になっていた。こうして二人で過ごしていると時間が流れるのなんて早いものだ。今テレビをつけたのならどこのチャンネルでもカウントダウン番組が行われていることだろう。せっかく二人で過ごす時間にテレビをつけようとは思わないけれど。


「あと少しだな」


 時計を見ながら落とした言葉につられるように時計を見る。カチカチと聞こえてくる音と同時に新しい年が少しずつ近づいてきている。

 新年まであと一分。
 会話が途切れ、自然と時間を数える。

 あと五十秒。四十秒。時間は一秒ずつ確実に時を刻んでいく。
 三十秒、二十秒。もうすぐ今年も終わりを告げる。
 十秒、九秒、八秒。この年とももう別れる時。
 七秒、六秒、五秒。新しい年はすぐ目の前まで来ている。
 四秒、三秒、二秒。新年へのカウントダウンもこれで最後。

 あと一秒。
 それを数えた終えた次の瞬間、世界は新年を迎えた。これから刻まれる一秒は新しい年を刻む時間。


「あけましておめでとうだってばよ、サスケ」


 年を越したことを確認してから笑顔で言われた言葉。新しい年になって一番最初の挨拶。一番最初の言葉。
 いつもは一人で迎えていた新年。でも今年は違う。小さい頃からずっと一緒の幼馴染が隣にいる。久し振りに誰かと一緒になって年を越した。それが一人の時とこんなにも違うなんて思わなかった。年越しと同時に大切な人に挨拶を伝えられることがこんなに幸せなことだったなんて。


「あけましておめでとう、ナルト」


 小さく笑みを浮かべて返せば、ナルトもまた笑みを浮かべた。
 誰かと一緒に過ごす温かさを忘れていた。一人暮らしを続けていて、今ではすっかり一人で過ごすことにも慣れていた。けれど、こうして幼馴染と一緒に年を越してみるのも悪くはないのかもしれないと心の中で思う。


「またよろしくだってばよ!」

「ああ」


 新しい年を刻み出した時間。この一年もまた、様々な出来事があるのだろう。
 楽しいこと、辛いこと。
 どちらも同じくらいにあるのかもしれない。笑って泣いて、そうやって過ごしていく日々が待っているのだろう。

 でも、この幼馴染はいつでも近いところに在るのだ。
 また新しい一年を共に過ごしていこう。










fin