今日もいつもと変わらぬ一日が終わる。最後の挨拶を済ませれば、次々と生徒たちは教室から出て行く。
 そしてシカマルとサスケもいつもの帰り道を歩いていた。








 二人が歩く帰り道では、青かった空はすっかり夕焼けに染まっていた。
 生徒会の仕事があったためにこんな時間まで学校に残っていたが、やっと今日の分の仕事も終わって学校を出たのだ。同じ生徒会で一緒だったキバとナルトはさっきの分かれ道で別れたところだ。故に、今はシカマルとサスケの二人だけとなっていた。


「ったく、生徒会なんて本当にめんどくせーよな」


 ぽつり、空を見上げながらシカマルが呟く。


「仕方ないだろ」


 それに対して隣を歩くサスケは当然のように返す。
 生徒会は生徒の中心のような存在だ。何か行事があればそれを仕切ったり、普段の学校生活のためにあれこれしたりするのが仕事だ。やらなければならないことは色々とある。面倒といえば面倒だが、生徒会という立場上は仕方のないことだ。


「第一、最初からそのくらい分かってただろ」

「そりゃあそうだけどよ……」


 生徒会になる前から生徒会というものが大変だということは知っていた。この学校に入ってから色々な場面で生徒会の活動を見ているのだ。それが分かっていて生徒会になったのだから文句も言えない。不本意でありながらもサスケは生徒会になったのだからと仕事はしっかりこなしている。


「……別に、オレに付き合うこともなかっただろ」


 小さく呟かれた言葉は、静かな帰り道ではしっかりとシカマルの耳まで届いた。
 確かに、シカマルはサスケのサポートに就くために生徒会に立候補したようなものだ。もちろん、仕事のことも承知してのことだ。他にも一人が立候補しだすと見知った仲間たちが立候補して、今の生徒会は昔から知っているメンバーも多い。


「それはオレがやりたくてやってることだからいいんだよ。けど、ここのところ仕事がやたらと多いだろ? 必要以上にあるっつーか」


 シカマルの発言にああとサスケも納得する。おそらく、そのことは生徒会の誰もが思っているだろう。


「それは、あの教師がわざとそうしてるんだろ」

「あー……やっぱりか」


 きっと生徒会に所属している全員が同じ意見で、理由も同じように考えているのではないだろうか。今日もナルトやキバがどうしてこんなことまでやらなければいけないんだと文句を言っていたところだ。声に出さずともみんな同じことを考えていたことだろう。
 この生徒会を見ている教師というのは、サスケやシカマルのクラス担任でもあるはたけカカシだ。クラスの話し合いの時も必要なことだけを伝えて別のことをしていたり、プリントを運ぶのも全部クラス委員長に任せたりしている。アンタの仕事だろと言っても適当な理由で任されているのが実情だ。他にも教師がやるべきだろう思うことをやらされたことは今までに何度もある。この教師はそういう人なのだ。


「オレは生徒会だけだけど、お前は大変だろ?」


 何が、と聞き返さなくても何を指しているのかは分かる。シカマルは生徒会には入っているが他は特に何もしていない。逆にサスケは生徒会だけではなくクラス委員もやっているのだ。
 どちらもなりたくてなったわけではないが、決まってしまったのだから仕方がない。やらなければいけないことはしっかりとこなしている。だからこそカカシがさらに色んなことを頼んでいるのかもしれないが、それを放っておくわけにもいかない。


「まぁな。けど、もう慣れちまったからな」


 慣れたいわけではなくても一年の時からこの担任の生徒なのだ。その上クラス委員も連続で引き受けることになってしまっているのだから自然と慣れてしまった。
 だからといって、いつも一方的にカカシがサスケにものを言うわけではない。家の都合でカカシとサスケは昔から関わりがあることからもサスケはカカシに色々と言うこともある。それは他の生徒にはできないことで、クラスメイトたちからすれば何かあった時には助かることも多い。


「いつもご苦労なことだな。まぁ、仕方ねぇんだろうけど」

「好きでやってるわけじゃねぇよ」

「分かってるって。だからオレも生徒会に入ったんだし」


 そういう立場だから仕方はないとはいえ、何でもこなすサスケには普段から感謝をしている。いつもクラス委員の仕事をしていて、今度は生徒会のも立候補することになってしまったがために、少しでもサポートしてやれたらとシカマルは思ったのだ。クラス委員の仕事もあるのだから、生徒会では少しくらい仕事を減らしてやりたいと。


「そうだったのか?」

「どうせ部活も入ってないし暇だったからな」


 まさかここまで仕事を押し付けられるとは思わなかったけど、という言葉にはサスケも苦笑いを浮かべる。アイツはそういう奴だと言い切るサスケにだよなとシカマルは溜め息を吐いた。


「まあこれからもよろしく頼むぜ、生徒会長さん」

「ああ。オレも頼りにしている」


 そう言って二人は笑い合う。副会長としてシカマルがサポートしてくれることがどれだけありがたいか。シカマルが副会長になってくれてよかったとサスケはずっと思っていたのだ。
 だからシカマルのサスケをサポートしたいという気持ちは十分本人に伝わっている。これからも他の仲間たちと一緒に生徒会を務めていこうと心の中で思う。

 そうやって話しながら歩いていると、いつの間にかいつもの分かれ道までやってきていた。どちらともなく一度立ち止まるとお決まりの別れの言葉を発する。


「じゃあな」


 一言だけの短い言葉を告げると二人はそれぞれの帰り道に向かって歩き出す。
 また明日も、新しい一ページを作る学校生活が始まる。










fin