いつもいつも喧嘩ばかり。任務の度に喧嘩をする。会えば喧嘩をすると言っても過言ではないかもしれない。そんな二人。ナルトとサスケは周りからは仲が悪いと思われている。
けど、彼等の事を良く知る人はそうは思わない。なぜなら、彼等は喧嘩しているわりにはとても仲が良いのだ。本人達に言えば同時に否定をするだろう。それでも仲が良いのは事実。『喧嘩するほど仲が良い』という言葉があるが、それはまさしく彼らの事のようだ。
喧嘩するほど仲が良い
「だから、そこは違うって言ってるだろうが!」
「そんな事ねぇってばよ!」
日課のようになっている喧嘩は今日もちゃんと行われている。ナルトもサスケもお互いに譲る事なく言い争う。どちらも譲る気配など全くないようだ。睨み合いながらの言い争い。これで負けたらこの言い争いにも負けてしまう。そんな風にしながら先ほどから続いている。
そんな様子を見ているのは、彼等と同じ班を組む春野サクラ。そして担当上忍であるはたけカカシ。よくもこう飽きずに毎日同じ事が出来ると思う。それこそ難しいのではないだろうか。
「なんでこんなに言ってるのに分からないんだよ、このウスラトンカチ!」
「分かってないのはお前だってばよ! サスケ!!」
譲る事もなければ終わる事もない。むしろ喧嘩はエスカレートしているのではないだろうか。口喧嘩とはいえ凄い争いだ。こんな様子を見れば誰でも二人は仲が悪いと確信する。二人を全く知らない人は当然。知っていてもそれほど親しくない人も同じだろう。
まさか、こんなに言い争いをしていながらも仲が良いなんて思う人は居ない。どこをどう間違えればそういう考えに辿り着くだろうか。辿り着く事が出来るのは二人を良く知る人物。その中にサクラやカカシは入っている。
「二人共、いい加減にしなさい!!」
さっきまでは二人の喧嘩を見ていたサクラ。だが、喧嘩にも限度があるという事だろう。かれこれ五分は続けられたと思われる喧嘩。それもサクラが一言いっただけでピタリと止まる。
サクラがナルトとサスケの事を良く知っているのは同じ三人一組を組んでいるから。それと同じようにナルトとサスケもサクラの事を良く知っている。これ以上続けてサクラを怒らせれば大変だという事を。
「全く、毎日同じことの繰り返し。よく出来るわね」
呆れてるというのだろうか。それとも感心しているというのだろうか。どっちであっても二人が嫌いだから言い争っているわけではないのは承知済み。
嫌いと言いながらも実際は嫌いではない。ライバルと呼び合える程の仲間。親友とも呼べる仲間。『喧嘩するほど仲が良い』『嫌い嫌いも好きのうち』などという、やっている事とは本当は違うという事を示す言葉。そんな言葉が彼等にはピッタリだ。そうは思っても決して二人に言う事はないが。
「それより、先生。もう任務は終わったんだから解散にしましょう」
今日の任務。それはもう終わっているのだ。終わった後に二人が喧嘩を始めた。だから今まで解散をせずにこうして居たのだ。はっきりいえば、迷惑だともいえる。解散してから勝手にやってくれれば帰るなり出来る事も解散をしていないのなら別だ。迷惑でないと言い切れるものではない。
「そうだね。それじゃぁ、今日は解散」
そう言ってカカシは報告書を出す為に行ってしまった。サクラも「また明日ね」とだけ言って帰った。解散と言い渡されたのだから帰るのも自由だ。
けど、残された二人はどうすれば良いかとお互いに悩んでいた。二人だけになってしまったからこそ、悩んでいる。此処に、サクラやカカシが残っていれば少しは違ったのかもしれない。などという、余計な事を考えていても仕方はない。その二人は既に行ってしまったのだから。
「………………」
お互いに沈黙の時間。それこそ辛いというものだろう。どちらかが話し始めればすむもののそのタイミングが分からない。そして、何よりどんな事を話せばいいのだろうか。その答えを出さなければ話す事すら難しい。
「…………じゃぁな」
一言だけ言って帰り道を歩き始めるサスケ。する事も話す事もないのだ。解散と言い渡された以上、此処に居る必要もない。それならば、帰る方が良いと考えたのだろう。此処に居てもただ沈黙が続いて辛いだけ。そんな場所から立ち去りたいと思うのは誰でも同じだろう。
「えっ、あっ、待てってばよ!」
サスケはナルトの言葉に足を止める。そしてナルトの方を見る。
さっきまでは話す気配もなかったけれど今は別だ。ナルトからすれば、サスケが急に帰るとは思っていなかったのだろう。だからこそ帰ろうとするサスケを止めた。
どんな風に話せば良いのか。それが纏まっていたわけではない。けど、今此処でサスケが帰ってしまったら。このままで良いのだろうかという疑問がナルトの中で生まれた。だから言いたいことが纏まったわけでもないけどサスケを引き止めた。
「さっきは、悪かったってばよ……。多分だけど、お前の言う事が正しかったんだろうからさ」
まず最初に出てきたのは謝罪の言葉。それはさっきの喧嘩の事。多分という言葉がついているのは、はっきりと確かとは言い切れないからだ。けど、おそらくそれは確かなのではないかと思う。思っても確信が持てないから多分という言葉を使ったのだ。
そんなナルトの様子にサスケは驚いた様子だった。けど、それを聞いてさっきの事を思い返す。ナルトと同じようにサスケも考えていたのだ。
「別に良い。オレも色々言ったからな……」
サスケもまたそんな風に言う。ナルトと違って、上手く言葉に表せないサスケにはこれが精一杯なのだろう。けど、短く簡単な言葉だとしても。その中にはたくさんの想いがあるのだ。いくら長い言葉だとしても想いがないのなら意味がない。それならば、短くても想いのある言葉の方が気持ちは伝わるはず。
その言葉に今度はナルトが驚く。サスケが自分にそんな風に言うという事はあまりない。滅多にないような事だ。おそらくナルトだけではないだろう。他の人に対しても同じだ。けど、それも驚きから嬉しさへと変わる。こんな風に自分は言ってもらえたのだという嬉しさに。
「そんな事ねぇってばよ」
それは、いつものナルトの言葉だった。明るく太陽のような少年。ナルトはそんな人なのだ。暗い表情ではなく、明るい表情で話す。それがこの喧嘩は終わりだというように告げている。言葉では言っていないものその表情がそう言っている。
ナルトの表情がなんだか優しい。それに元気をもらえる。ドベだと言われていても、真っ直ぐ前だけを見て進む。そんな彼らしい事がそんな気持ちにさせてくれているのだろう。
「とりあえずさ、この話はもう終わりな。いつまで続けてても仕方ねぇってばよ」
「……そうだな」
これで解決したのだ。今日の喧嘩の事は。また明日は分からない。だけど、ひとまずこれで終わり。二人共気まずい感じはもうない。喧嘩の事をちゃんと解決出来たからだろう。
もうお互いにやる事もない。だけどこのまま帰るのもどうかと思う。決して、喧嘩をしていたからというわけではない。そんな気持ちになっていたのだ。けど、それはお互いに同じだったようだ。だから一緒に修行をする事にした。いつもは一人でやっている事だけれど、二人でやるとまた違うものだ。
喧嘩してもこんな風にちゃんと仲直りが出来る。だからこそ二人を良く知る人達は、この二人は仲が良いと言うのだ。いくら喧嘩してもそれは変わらない。むしろ、喧嘩して日にちを重ねるごとに仲は良くなっているのではなだろうか。
喧嘩するほど仲が良い。
その言葉はナルトとサスケ、この二人にピッタリの言葉。
fin
「うちは物産展」のあおいあかね様に差し上げたものです。ナルトとサスケはいつも喧嘩ばかりしています。それでもちゃんと仲直りをする。だからこそ喧嘩するほど仲がいいという言葉がピッタリのようです。