「カカシ先生!」


 走ってやってくる小さな姿。キラキラ光るような黄色が目立っている。瞳は澄んだ空のような色をしている少年が目の前までやって来た。


「どうしたの?」


 短く問えば少年――ナルトは小さく笑う。その様子に疑問を浮かべていると、ナルトはゴソゴソとポケットの中に手を突っ込む。何かを探しているような仕草をじっと眺めていると、漸く目的の物を見つけたのかナルトは何かをポケットから取り出す。そして、その手はそのままカカシの前へと伸ばされた。
 手の上に乗っていたのは、ラーメン一楽と大きく書かれている紙だった。その下には無料ということが書かれていて、どうやらこれは一楽のタダ券らしい。


「こないだ一楽のおっちゃんに貰ったんだってばよ!」


 嬉しそうに話すナルトにつられてカカシも笑う。そして「良かったね」と返す。
 ナルトがラーメンを好きで、更に一楽のラーメンが大好きということは十分すぎるほどに知っている。野菜を食べろと言うと嫌がるが、野菜ラーメンなら食べられるというほど。こんなにもラーメンが好きなことはカカシだけではなく、イルカや同じ班のサスケやサクラも知っているだろう。
 そんな一楽のタダ券を貰ったのだからとても嬉しいのだろう。その声や表情、全てからそれが感じ取れる。ラーメンばかりを食べるのはどうかと思うが、こういうことは素直に一緒に喜ぶことにする。


「んでさ、おっちゃんがこのタダ券を二枚くれたんだってばよ。だから、カカシ先生も一緒に行かねぇ?」


 突然の誘いに少し驚きつつも答えに迷うことはない。ナルトに一緒に行かないかと誘われて断わる理由など一つもないのだ。むしろ、誘ってもらえたことが嬉しい。


「んー、ナルトがいいなら一緒に行こうかな」


 了承の返事を貰うとさっきよりも表情が明るくなる。すぐに一歩分前に足を踏み出して「じゃぁさ、早く行くってばよ」とカカシのことを呼んでいる。その姿を見ながら「ハイハイ」と答えると、一歩ずつ歩いて行く。遅いと言われながらもラーメンは逃げないなんて話しながら。
 一楽までの道のりはそれほど遠くない。けれど、他愛ない会話が二人の大切な時間を作っていた。

 こんな時間がこれからも続いていきますように。










fin




カカナルを見てみたいと言って頂けたので書いてみたものでした。
短くてすみません。ありがとうございました!