友達、仲間、親友、ライバル。知り合いと一言で言っても色々ある。同じチームの仲間であったり、競い合えるライバルであったり、誰よりも信頼できる相手であったりと様々だ。
忍者学校時代はそれぞれバラバラだった。だけど、下忍になり三人一組を組んだ。同じ班になった人とは運命共同体。最初は上手くチームワークが出来ていなかったところもあったようだが、今では他の人と組む時とは別格のチームワークを身に付けている。
この三人一組を組んでから最初のお正月。三つの班の担当上忍から交流を深める為に、三つの班に所属する新人九人が一緒に過ごすということを言い渡されたのはつい昨日のこと。
三人一組
新年になっても相変わらずの遅刻をしてきた担当上忍に文句を言ったのはナルトとサクラ。誰が聞いても分かるようなバレバレの嘘に「はい、嘘!」と声を揃えて突っ込む。今日は合同でやると聞いていたから流石に遅れてこないのかと思えば見事に三十分の遅刻。いつもこうなのかと聞かれたのに対して今日はマシだと答えておく。酷い時は五時間以上も待たされたものだ。
どうやら今日は言われた通りに交流を深めることをするらしい。まず最初にカルタから始まった。読み札を上忍の先生が読み、下忍達は札を取る。やる気がないような人も居れば、ライバル視をして火花が散っているような人達も居る。続いて羽つきを行えば墨と筆はつきものだ。笑いが飛び交う中で文句が飛ぶこともあった。もう一度だと勝負を挑んだりしながら交代でやっていく。終わった後は真っ直ぐ水で洗い落としに行く。このままでずっと居るのは流石に辛いものがある。
「さてと、それじゃあ次は……」
羽つきを一通りやり終わったところで切り返すようにカカシが話し出す。次は一体何をするんだというように全員がそちらに耳を傾ける。
最初は忍者学校から知っている相手なのだから交流など必要あるのかと思っていた。正直に言えば、やる必要もないだろうと考えていたのだ。だけど、これがやってみると楽しいもので白熱してしまう。ナルトはいつでも騒いでいるかと思えば、サクラといのの対決も熱いものだ。シカマルのようにやる気なしで見ている人も居たがそれはそれで面白い。
これは予想以上に楽しいということがやってみて分かった。笑顔が飛び交うような場所となっているのを見ると、やはり子供であることが分かる。子供の楽しむ姿は微笑ましいものだ。
「お正月の特別なプレゼントを賭けた勝負だ」
特別なプレゼントという名前になんだろうという疑問が浮かぶ。その疑問は終わってからのお楽しみだとアスマが続ける。結局中身は分からないが何かがあるのは確かだ。そう思うとますます盛り上がってくる。
ルールは簡単。ある場所に隠してきた物を見つけるだけ。一人で探しに行ってもいいし、二人や三人といったチームで探しに行ってもいい。途中にトラップを仕掛けるのも有りであれば、戦闘になっても構わない。要はサバイバルのようなものだ。一番最初にそれを見つけてきた人にプレゼントが渡されるということになる。
「ルールは分かったかしら?」
紅が確認するように聞けば、分かったという各方向からが返ってくる。これから始まる勝負が楽しみだということが声だけで分かってしまう。それほどお正月のプレゼントというものが楽しみなのか。それとも演習が楽しみなのか。もしかしたらそのどちらもなのかもしれない。
このメンバーでやる演習というのはこれが初めてだ。忍者学校の授業を除けば一度もない。久し振りのメンバーでのサバイバルは、さっきまでのお正月の遊びとはまた違う楽しみがある。
「絶対オレが一番になってやるってばよ!!」
堂々と宣言するように言うナルト。それに続けとばかりにそれぞれが言いたいことを言っていく。
「お前には負けねェよ! 勝つのはオレ達だ」
忍者学校時代、ドベだった奴に負けるわけがないとでも言いたげな言葉だ。キバが言い終わるなり赤丸も同意見だというように「ワン!」と吠える。
いつでもキバと赤丸は一緒に居るだけあってチームワークは抜群だ。キバが小さい頃からずっと一緒に居るらしい。忍者学校に連れて行った時はイルカに怒られたものだ。キバと赤丸のチームワークは半端ではなく、繰り出す連携技も凄い。
「アンタには負けないわよ、サクラ」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
またもや挑戦的に話しているのはサクラといの。親友でありライバルである二人は、今日のカルタや羽つきでも火花を散らして戦っていた。女は面倒だというシカマルの意見もこの二人の熱い戦いを見ていると分からない気がしないわけでもない。
そのシカマルといえば「めんどくせー」といつもの口癖を呟いていた。隣ではチョウジがポテチの袋を開けている。バリボリと食べている姿は見慣れている。この光景を見ながら「大変そうだよね」と話している。
もう分かっている性格の通り、言いたいことを言ったりその行動は珍しいようなものでもない。見慣れているというほどでもないが、いつも通りの光景だと全員が思っていることだろう。
「そろそろ始めるよ」
始まりという言葉に騒がしかった空間が静かになる。声には出さずに、どうやってプレゼントを手に入れるのかを考えているのだろう。
話したりはしない。けれど、さりげなく視線のやり取りが交わされている。そちらを見れば上手い具合に視線が合い、お互いに分かり合っているようだ。数人だけでなく全員が全員。誰かしらと視線を合わせては何かを承知しているようだ。
そんな様子を眺めながら、カカシは始まりの合図を告げる。
「開始!」
合図と同時に彼等は一斉に動き出した。さて、これからどのような戦いが繰り広げられるのか。上忍達はそれが楽しみだ。
ただ、普通に楽しみだと思っているのも事実。けれど、それだけではない。
さっきの下忍達の動きも見ていたが、あの視線でやり取りがどんな意味を持っているかは大体予想が出来ていた。そのことを考えると、余計に楽しみが生まれてくるというものだ。
□ □ □
「んじゃ、オレはこっちに行くぜ」
「なら、オレがこの方角を調べてこよう」
「そ、それじゃあ、私は向こうを見てくるね」
□ □ □
「ここは、こうだ。んでもって、これはこんな感じでいく」
「うん。分かったよ、シカマル」
「そうと決まったら、早速いっくわよー!」
□ □ □
「もし、何かあってもさっき言った通りだ」
「分かったわ」
「了解だってばよ」
□ □ □
見えなくなった下忍達の姿。合図の後に彼等が集まって決めた作戦とはどんなものなのだろうか。
(コイツ等の成長、楽しみだな)
どんな人数で探しても、トラップを仕掛けることも戦闘になるのも有りというサバイバルと同様なルール。誰と組み、どんな戦いを行うのかと思っていた。言いたいことを言っていて、どうするかなど全く話していなかった。
それが僅かな時間で合図の後に集まることを互いに確認する。そして、始まるとすぐにそれぞれの三人一組の班ごとに集まった。
チームワークがなかった最初の頃とは違う。それがとても明白に分かった場面だ。一人で行うのではなく、慣れている三人一組のメンバーと共に進むことを選んだ。
その成長はどれほどのものなのだろうか。それはこれからの戦いで分かること。
三人一組の大切さ。チームワークの大切さ。
あれから作り上げてきた絆。様々なことが今、ここで明らかになる。
fin