次の任務内容を伝えられたのはつい先日。依頼内容、ランク、そして同じ任務につく小隊のメンバー。それだけを簡潔に説明され、それから各々の家へと帰った。
その任務に備えて、それぞれが準備をする。
大切な仲間
先日伝えられた集合場所へと向かうと、まだ誰も来ていなかった。いつものことか、と思いながら集合時間になるのを待つ。少し経つと、桃色の髪をした女性がやってきた。
「サスケ君、おはよう」
そう言って声を掛けるのは、元第七班の仲間である春野サクラ。それに短く返事を返すと、なんだか嬉しそうにサクラは口を開いた。
「久しぶりよね。私達がまた一緒に任務をするなんて」
「そうだな」
あの頃――下忍の時は、三人一組を組んでいたのだから当然のように毎日一緒に任務を行ってきた。それが中忍になり、上忍になって。三人一組での任務はなくなり、それぞれが任務ごとに小隊を組んで出掛ける。三人一組で任務をやっていたあの頃はまだ下忍だった数年も前の話。
それからというもの、時々それぞれが一緒の任務に当たることもあった。けれど、前のように七班で任務に行けることは滅多になかった。それも当然のことだけれど、下忍時代を共に過ごした仲間とたまには一緒に任務をしたいと思うこともある。
「あれから数年経ったのよね……。サスケ君はナルトと組むことも多いんでしょ?」
「なぜかは分からないけどな」
本人達が意図しているわけではないが、何かと同じ任務に当たることの多いナルトとサスケ。おそらく、術の相性やコンビネーションという点で、一緒に組むことが多いのだろう。医療忍者であるサクラはあまり同じ任務につくことはないが、この二人はよく同じ任務についている。
そんな話をしていると、「おはよう!」と元気よく現れた男が一人。それに二人も挨拶を返す。
「あれ、カカシ先生はまだかってばよ?」
「アイツが時間を守るわけがないだろうが」
「そうよ。カカシ先生が遅刻しなかったら雨でも降るんじゃないの?」
「確かにそうだよな。先生ってば、相変わらずだってばよ」
この会話だけを聞くと、酷いことを言っているようだがそれも仕方がない。下忍時代、担当上忍であるカカシを何時間待ったことか。集合時間がとっくに過ぎているというのに、なかなかやってこない。遅刻なんて殆ど毎日の出来事だったのだ。こう言われても仕方がない。
「それにしてもさ、サクラちゃん達と七班で任務なんて久しぶりだってばよ」
「そうね。でも、アンタ達はそうでもないんでしょ?」
「まぁそうなんだけどさ。でも、七班で任務をするのとは別だってばよ」
今日の任務は、久しぶりに下忍の頃の三人一組であった七班が揃って同じ任務につくことになったのだ。誰かと誰かが一緒になることがあるとはいえ、こうして四人が全員一緒になることは本当に久しぶりのこと。まるであの頃のようで、また四人で任務が出来ることは素直に嬉しい。
「やぁ、諸君。おはよう」
今日は困っていたお婆さんを助けていて。なんて言いながらやってくるのは、七班の担当上忍であったはたけカカシ。
その台詞を聞いてすぐに「はい、嘘!」と突っ込みを入れる二人もあの頃と変わっていない。カカシも「それにしても久しぶりだね」なんて呟いている。それぞれが上忍になり、里で活躍していることは嬉しいことだ。でも、その半面ではまた一緒に任務をしたいと思うこともある。それが、久しぶりにこうして叶ったのだ。
「お前等の噂はよく聞くよ?」
「じゃぁ、オレの大活躍の話も聞いてるのかってばよ!?」
「お前は活躍以外のことの方が知られてるんじゃないのか?」
「そんなことねぇってばよ!」
三人一組を組んだばかりの頃は、この二人もよく衝突をしていた。今はそれほど喧嘩することはなくなったとはいえ、こうしたやり取りを見ていると懐かしい気がする。それでも、大きく喧嘩に発展しないあたりは成長しているということなのだろう。
そんな二人をよそに、サクラは「それより、早く任務に行きましょう」と話す。その言葉を合図に、任務へ出発する準備をする。忍具の確認など一通り終えて、早速任務へと出発する。
今回の任務は、ある国に機密文書を届けること。敵との交戦の可能性もあり、部隊長にカカシが、医療忍者としてサクラ、そして戦闘になった時に連携のしやすいナルトとサスケが選ばれたのだ。
大切な任務とはいえ、このメンバーで任務に行けることは嬉しい。その国へ向かいながら、会話が繰り広げられる。
「そういえば、今日ってサスケ君の誕生日よね?」
サクラにそう言われて「あぁ」と一言だけ返した。するとサクラは「誕生日おめでとう」とお祝いの言葉を言った。続くようにして、「サスケって七月生まれだったね」なんて言いながらカカシからも。ナルトは「夏生まれなんだよな」と言って「悪かったな」と言われながらも「別に悪いとは言ってないってばよ」と話してから「誕生日おめでとう」と言葉を続けた。
「任務だから何も用意できなかったんだけど……」
「別に構わねぇよ」
申し訳なさそうに話すサクラに、そんな必要はないとサスケは言う。わざわざ形にして祝ってもらえなくても、こうやって祝ってくれるのであればそれで十分だと。
そんな二人の会話に、何かを思いついたようにナルトが口を開いた。
「あ、じゃぁさ! 任務終わってからお祝いすればいいってばよ!」
そんな提案をするナルトに、「そこまでする必要はない」と言うサスケ。けれど、本人の意見に関わらずに周りはやる気になってきているようだ。
「いいんじゃない? たまにはさ」
「せっかくの誕生日なんだから、お祝いしなくちゃね」
本人の意図をしないうちに、もう既に誕生日を祝うことは決定のようだ。たった一人のためにそこまでやることもないだろう、と思うのだがどうやらそんな考えは彼一人らしい。サスケからしてみれば、誕生日なんて生まれた日というだけで、里に戻ってからすぐに次の任務につくかもしれないのにそんなことをする必要はないと思う。
その考えに気づいたのか、カカシはそっとサスケに言った。
「誕生日っていうのは大切な日だよ? この世に生まれてきた日なんだからね」
そう言って、優しく笑った。続けるようにして、サクラやナルトも話す。
「サスケ君の誕生日なんだから、私達がみんなで祝わないとね」
「そうだってばよ」
笑顔を向けながら、そう言ってくれる。そんな仲間達を見て、コイツ等だからそう言ってくれるのかもしれないなとサスケは思う。下忍の頃からずっと一緒にやってきている仲間だからこそ。そんな仲間だから、これからも大切にしていきたいと思うのだ。
サスケは小さく微笑みながら、ナルトとサクラに向かって言った。
「それなら、さっさと任務をやるのが先だろ?」
早く終わらせることが出来れば、その分時間も長くなるかもしれない。せっかくお祝いするとなったのなら、少しでも七班みんなで一緒に過ごしたいと、そう思う。
それを聞いた二人は、嬉しそうに笑顔で答える。
「分かってるってばよ!」
「任務が終わったら、約束ね」
一致団結している三人。その様子を微笑ましそうに見ているカカシ。三人一組とは、下忍になって一番初めに組む仲間。運命を共にしてきた仲間。
そんな仲間との絆はとても深く大きい。その絆が途切れることはきっとないのだろう。ずっと、大切にしていくことだろう。大切な仲間を、大切な友を。
温かな笑顔に包まれて、この誕生日を祝おう。
大切な仲間達と共に。
fin