いつもと変わらない任務が始まる。ランクはDという下忍だからこそのものだ。Dランクということもあり、内容も難しいようなことではない。何かに使う為に必要な植物がないから探してきて欲しいとのことだった。その植物が生息しているという森の中に行くと、それぞれ植物探しをする。相変わらずの文句を言っていながらもしっかりと任務をこなす様子は、忍としてそれほどの月日が経ったことを感じさせられる。
植物を探すこと数十分。なかなか見つかる様子はない。今探しているような場所にはないのだろうかと考えると別の場所を探してみることにする。こんな平らな場所ではなく、もっと別の場所にあるのではないかと考えて。
大切な存在
どこにあるのかと探し続けても見つからない植物は珍しいものなのか。ふとそんな考えが浮かんでしまう。そうでなければこんなにも見つからないことはないだろう。見当外れの場所を探しているのであれば見つからないのも無理はないことだが。
依頼人から聞いたのは、植物の名前とその写真。そして生息しているというこの場所のことだ。分かっている情報を頼りに探すしかないのだから、見当外れだと考えたら別の場所を探してみるしかない。
この場所とは違う場所。そう考えながらナルトは森の中を歩いていた。歩きながらもその植物がないかと周りを見渡す。植物というのは環境によって育つ場所が違い、強いものは意外なところでも育っている。タンポポがいい例でどこにでも咲いている。
「もう少しこの植物の特徴が分かればな……」
そうすれば生息している場所が今よりかは予想が出来たかもしれない。そう思ってももう遅いので諦めるしかない。生息していそうな場所と考えていると、もしかしたらこの森でも特定の場所なのかもしれないと気付く。
特定というと平らでも環境でというものもあるが、川沿いにあるものや滝の傍、崖に咲いているものまである。この辺りでありそうな場所はと考えてナルトはいきなり走り出す。確かこの森には……と思いながら走ってついた先には道がない。道がないのもここが崖なのだから当然といえば当然だった。
「えっと、依頼された植物は……」
写真で見た植物を思い出す。それと同じ形の植物がないかと上から見下ろす形で探す。端から見落とさないように気をつけながら一箇所ずつ見ていく。やっぱりないのかなと思い始めた時。瞳に映ったのは、写真で見たのと同じ植物だった。
本当に合っているのかと少々不安になりもう一度あの写真のことを思い出す。形の特徴を確認してまた崖の途中にある植物を見る。さっき確認した特徴と照らし合わせながら全部を見終える。
「間違いなさそうだってばよ」
これが依頼された植物のようだ。見当外れの場所にあるのかもしれないというのはその通りだったらしい。それでも見つけられたのは、ナルトが植物には詳しかったからだろう。忍者学校でも植物の授業は真剣に受けていて、家でも植物を飼っているというほど植物が好きなのだ。一般常識などを授業をサボって知らないのも問題だが、好きなことだけでも知っていて役に立つのはいいことだ。
見つかった植物を採る為にその場所まで降りる。場所が場所なだけに気をつけなければすぐにでも足場を失ってしまいそうだ。足場を確認しながら降りること数分。ナルトは無事に植物の所まで行くことが出来た。
「よし! 後は戻るだけだってばよ」
しっかりと植物を忍具と一緒のポーチにしまう。見上げた先には降りてきたばかりの崖の壁が見える。無事に降りてこれたとはいえ、足場が安定しているとはいえない場所だ。戻るにも気をつけていなければ何時落ちてもおかしくはない。
行くか、と気持ちを改めて一番近い出っ張りの部分に手をかける。力を入れることで大丈夫かどうかを確認し、次に進む手も同じようにして確認する。降りてくる時にはあまり感じなかったが、植物を採る為に進んだ距離は意外と長いようだ。
そろそろ半分は登っただろうという辺りまできた。次の一歩の手をかけて安全性を確かめる。軽く確かめてからしっかりと手をかけて力を入れると、耐え切れなかったのか手をかけていた岩が崩れる。だが、なんとか反対の手は離さずにこの位置を維持することが出来た。
「危ねぇ…………」
一言だけ、安心の言葉を漏らす。確認していても危険が伴っていることを教えられたようだ。残された片手の方を見てみると、いきなり全体重をかけられ先ほどの勢いで岩に亀裂が入っていることに気付く。いくらさっきまでは支えられていても新しい重さが加われば話は別だ。
早いうちに開いてしまった手を使って体勢を立て直さなければいけない。
そう考えて体を動かすと、また力が加わり岩に重さの負担が増える。すると、とうとう耐えられなくなった岩は亀裂の入った場所から崩れてしまった。
「ぅわあっ!」
完全に体勢が崩れる。チャクラでどうにかしようにも出来ないような体勢になってしまっていた。どうする、と考えるよりも先に重力に逆らえない体は下に向かってしまう。
このままだと落ちる。
確信してもどうにかする手段が思い浮かばない。このまま落下しようとは思わないが、チャクラを集中して手をかけようにも岩は崩れてしまう。足にチャクラを集中して崖を利用するにも無理があるというものだ。どうしようかと考えながら落ちていく己の体を感じる。何も浮かばないまま目を閉じる。
「ナルトォ!!」
聞きなれた声に耳を傾ける。同じ任務にきているとはいえ、この場所へはナルトが一人でやってきたのだ。居るはずのない人の声に疑問を感じる。そのせいか本物なのかと今考えるようなことでもないことを考えてしまう。考え始めてからすぐに体に新たな感覚がした。それは、さっきまでの重力に逆らわずに下に落ちるのとは反対。つまり、宙に浮くような感覚だった。
宙に浮く感覚というのもおかしい。落ちているにしても宙に浮いているのは確かだが、そういう感覚ではない。上にあがるような感じのものなのだ。この世界には重力があり、それが有り得ないだろうことはナルトも知っている。閉じていた目を開けて状況を確認すると、今度はナルトが名前を呼ぶ。
「サスケッ!?」
驚いたように呼ぶと相手もそれに気付いたようだ。名前を呼び終わると、さっきまで落下していたはずの体は、無事に元居た崖の上に辿り付く。ストン、という着地をすると急いで切り返す。下に向かおうと今にも飛び出しそうなところを寸前の所で止められた。
「ナルト! さっさとサクラ達の所に行け!」
聞こえてきた言葉に足を止めた。だけど、言われた通りにするつもりはなく行こうとしない。それよりも先にやることが目の前にあるからだ。
「嫌だってばよ! 何ですぐに行かなくちゃ行けないんだよ!」
相手に届くように叫びながら話す。いつものように話してもこれだけ距離があれば聞こえないのは分かっていることだ。
すぐに行けと言われても行動しないのは、己を助けた相手を放っておくわけにはいかないからだ。頼んだわけではないとかそういう問題ではなくて、結果的にこの現状になっているのだ。どちらを優先させるべきかと考えてナルトの中で簡単に答えは出されていた。
しかし、ナルトとは違う考えをサスケは持っていた。どちらを優先させるか、という順序が違うのだ。
「これが任務だからだ。見つけたんだろ?」
「だけど、任務だからって違うだろ!?」
「オレは大丈夫だ。無駄な心配してねぇで、サクラ達の所に行け!」
でも、と言いかけたが言葉を飲み込んだ。これ以上言っても仕方がないと分かったからだ。ナルトはサスケをと思っていてもその本人が早く行けというのだ。今ここで行かないわけにもいかずに、仕方なくこの場を後にする。
いつもよりも速くと思いながらナルトは走っていた。それほど離れていなかったサクラ達の居る場所へはあっという間についた。ポーチから出した植物をサクラに預けると「後はよろしく」とだけ言ってまた走り出した。後ろの方でサクラが名前を呼んでいるのが聞こえたが、今は止まるわけにはいかずにそのまま走って行った。
またこの場所へ戻ってくると、ナルトは何の躊躇もせずに崖を飛び降りる。それにはサスケの方が驚いた。気配を消しているわけでもない相手の動きは分かっていた。ナルトがどういう人なのかも分かっていた。だけど、こんな行動をするとは予想もしていなければ考えられなかったのだ。
「ったく、このウスラトンカチが。お前は何がしたいんだ?」
突然飛び降りてきた相手を見ながら問う。その声からは呆れている様子も伝わってくる。誰がさっきまで崖の上で助けるだの言っていた相手が飛び降りてくると予想できるだろうか。流石、意外性ナンバーワンと言われるだけのことはあるというものだ。
「だってさ、どこから降りればいいか分からなかったんだから仕方ねぇだろ?」
降りる場所をわざわざ探すのは確かに大変だろう。大変だが、それが飛び降りることに繋がるのだろうか。すぐにそう考えるのはナルトぐらいだろう。いくら探すのが大変だといっても普通は少しくらい考えるものだ。
ナルトの場合は、早く行動するという思いの方が強かった為にこうなったのかもしれないが、それにしたって突然飛び降りるというのは危険な行動でもある。忍であるとはいえ、怪我をしないとは言い切れない。
「だからってな……」
続けようとした言葉を止める。ナルトに何と言おうが仕方がないのだから無駄に言う必要はないと考えたのだ。いくら言ったところでナルトの考え方は変わらない。だからこそ意外性ナンバーワンのドタバタ忍者だという名が通っているのだ。こんな忍はナルト以外には居ないだろうというほどだ。
飛び降りてきたナルトは、幸い怪我も何もなかった。ここで怪我をしたといっても洒落にもならないだろう。それこそサクラに何と言われるのやら。仲間思いの彼女だからこそ色々と言うのだ。同じ班には、いざという時に何をするか分からないような男達が居るのだから。今の現状がまさにそれを表している。
「それで、サクラ達の方はどうしたんだ?」
「とりあえず、あの植物を渡しておいたってばよ。その後は、ここに戻ってきったから分かんねぇけど」
渡したらそのままここに来たから早かったのかとサスケは納得した。それでよかったのかと考えてしまえばどうなのだろうかという部分があるが、届けただけよかったのだろう。こんなところで二人でどうこうしてる間にもサクラは探し続けているのであれば悪いからだ。担当上忍の方は、元から一緒に探してもいないのだから大して気にしてもいなかった。
これで植物の方はもう大丈夫だろう。けど、ナルトの説明からすれば渡してすぐにここに来たらしい。それはつまり、サクラは何かあったのではないかと心配しているということだ。ナルトの行った方向から考えれば、ここに来るのも時間の問題だろう。
「後でサクラに怒られるだろうな」
その場に居なくなった二人のことを心配しているだろう。いつも無茶ばかりするような人達なら尚更だ。ナルトの様子からも何かがあったことは分かっているだろうし、心配しながら探しているのではないかということは予想出来る。見つかれば安心するものの文句の一つくらいは絶対に言われるだろう。
仲間思いだからこそ言っているということは、ナルトもサスケも分かっている。だからいつもそんな彼女の言葉を聞いて一言だけ謝っている。また無茶することは分かっていてもすぐに許してしまうのは、お互いを知っていて信頼関係も出来ているからだ。
「あー……そうだよな……。一言くらい言っておいた方がよかったよな?」
「当たり前だ」
何も言わずに来てしまったことを今更ながらに後悔する。この後起こるだろうことを考えて苦笑いを零す。
二人は丁度いいくらいの距離を開けて座っていたが、急に何を思ったのか。ナルトは「あ」と言うとサスケの方に少し近づいた。
「そういえばさ、お前ってば怪我とかしてねぇの?」
思い出したかのように聞かれた質問に驚くより呆れてしまいそうになる。全く、何の為にコイツは飛び降りてまでこの場所にやってきたのだろうか。無駄な心配だと思いながらも、忘れてたとはいえ心配してわざわざ来た仲間に何も言わないわけにもいかない。下手に言えば余計に五月蝿くなると分かっているからか、サスケは簡単に答えを返してやる。
「別に、大した怪我はしてねぇよ」
聞き終わると、どこかに疑問を持ったのか「本当に?」と聞き返してくる。それには「あぁ」とだけ返しておいた。
実際に、大した怪我はしていないのだ。怪我をしていないわけではないが、間違った事は言っていないだろう。その怪我というのも軽いもので、本当に大したことがないと言えるようなものだ。それを怪我をしたとでも言えば、騒がしくなるのは分かっていたからあえてこんな風に言ったというわけだ。
だけど、腑に落ちないような顔をしている相手はまだ疑問を持っているようだ。しつこいことは分かっているのだろうがもう一度だけと聞き返してきた。
「本当に、怪我してねぇの?」
なぜかこういうことには鋭いチームメイトはじっと見ている。普段はあまり気付いたりしないというのに、どうして怪我や病気のことになると鋭くなるのだろうかと疑問に思ってしまう。聞いたところでまともな答えが返ってくる保証もないので聞いたことはないが。不思議なものである。
しっかりと答えを聞き出そうとしているナルトにサスケの方が諦める。溜め息を一つ吐いてから今度はちゃんと答えるを返す。
「軽い怪我だ。別になんともないけどな」
分かりやすく答えてやれば今度は聞き返したりはされなかった。それを聞いてナルトは少し下を向く。
自分のせいだと思っているのだろう。大した怪我ではなくても、怪我をさせてしまったことに変わりはないのだから。サスケはそんなことを気にしていないがナルトは気にしてしまう。
「ごめん…………」
すまなそうにしているナルトは、あの時と同じようだった。そして、サスケもあの時と同じようにして話す。
「お前のせいじゃないから謝る必要はない」
「でも」
「オレが勝手にやったことだ」
あの時――波の国の時と同じようにして二人の会話は進められた。話していることは殆ど変わっていない。
波の国の時というのは、初めてのCランク任務をして依頼されたものだ。今は“なると大橋”となっているあの場所が建設途中だった頃。その橋を作っているタズナの護衛をしていたナルト達は再不斬と白と戦うことになった。ナルトとサスケは白と戦い、そこでナルトを庇ったサスケは死にかけたのだ。
その時にも今のような会話が繰り広げられていた。サスケは勝手にやったことだと言い続けて、ナルトはそれは認めても勝手に死ぬようなことはするなと言った。それから木ノ葉に戻ってからは少しギクシャクしていたものだ。
「……波の国の時もそう言ってたよな。サスケは、いっつもそうだってばよ。なんでそんな風にするんだってばよ。自分の命より、他の命のが大切みたいにさ」
みたいにとは言っているものの実際はそうなのだろう。そうでもなければ死ぬかもしれないというのに仲間を庇ったり出来ない。中忍試験の時には、仲間が死ぬのは見たくないとも言っていたこともあり仲間を大切に思っている。大切に思っているのはいいことだとナルトも思う。だけど、それとこれとでは違うのだ。
ナルトの言葉に少し悩むように考える。そして、発された言葉は間違ってなどいないものだった。
「仲間は大切だろ?」
疑問系で言われた言葉には、ナルトも頷くことしか出来なかった。仲間が大切だということに反対の意見はなく同意しているからだ。考えてみれば、もし立場が逆だったとしてどういう行動をとるのかといえば、おそらくサスケと同じことをした。仲間を助けたいという思いが何よりも先に動いてしまうからだ。
この質問でそれに気付くことになった。けど、だからといって自分の命が大切ではないというわけではない。ナルトは、サスケを見ていると自分の命をそれほど大切だと思っていないようにも感じてしまうのだ。
「そうだけどさ……。なんっつーか、サスケって自分の命を大切に思ってる?」
感じてしまっていることを聞いてみれば、少しの沈黙が出来た。すぐに答えられるほどは思っていないということだろうか。それとも他に何かがあるのだろうか。分からないが答えを待つしかない。
「……仲間より大切に思ってないかもな」
いつもより少し小さな声で言われた言葉。どうやら自分の命を全く大切に思っていないわけではないようだ。それよりも仲間の方が大切のようだが、自分の命も少しでも大切に思っていることが分かった。
それに少しだけ安心するものの言わなければいけないことはあるようだ。あの時に言ったことと同じようなことでも、それを伝えなければいけない。伝えなければ、いつ人の為に命を捨てるか分かったものではないと思ったからだ。
「別に、お前の気持ちがいけないとは言わないってばよ。オレも、仲間は大切だと思うし。でもさ、オレにとってはお前だって大切な仲間なんだってばよ」
真剣に、思いを込めて伝える。仲間のことを思う彼の気持ちも分かるから否定はしない。それは同じだからこそ、ナルトにとってはサスケが大切だと伝える。
同じチームメイトでライバルで友達で。喧嘩ばかりで仲が悪いと言われていた最初の頃とは違い、今でも喧嘩はするけどお互いが信頼できる相手になっている。性格も違うはずなのにどこか同じものを感じる。
サスケだけでなく、サクラ達も当然大切だ。みんな大切だけど、一番大切な仲間といえる相手がサスケなのだ。
「オレにとっては、サスケが大切な仲間だから、オレのこと助けて危険になってばっかりなんて嫌なんだってばよ。だから、自分の命も大切にして欲しいんだってばよ」
一つ一つの言葉にナルトの思いが込められている。それは聞いているサスケにしっかりと伝わっていた。ナルトも仲間が大切だからこそ、サスケ自身の命も大切にしてもらいたいということも分かった。自分が思っていることと変わらないからだ。だから波の国であんなにも勝手に死ぬようなことはするなと主張していたのかと納得する。
お互いに仲間が大切だから相手を大切に思っている。今更ながらに二人は互いの言葉でそれを知ることとなった。
「分かった。言っておくが、お前も同じだからな」
「そんなこと、言われなくても分かってるってばよ」
二人で言葉を交わすことでしっかりと確認する。いざという場面でどうするかなど分かったものではないが、この約束を忘れることはないだろう。ただの口約束、と思うかもしれないが二人にとっては軽い約束ではない。一つの約束なのだ。
「なんだろうな。やっぱ、嫌いじゃねぇんだよな」
ポツリと呟くように言われた言葉は突然だった。ナルトが何を考えて口に出したのかは分からない。その言葉はサスケにも十分聞こえていた。コイツは何言っているんだと思いながらも自然と言葉を返していた。呟かれたナルトの言葉よりも意外な言葉を。
「嫌いじゃないなら、好きなのか?」
ほぼ無意識といっていいだろう。言ってしまった言葉に、はっとして口元に手をやる。ナルトにも聞こえているのだからもう手遅れだ。さっきナルトに対して思ったことをそのまま自分に問いたくなってしまう。出来ることなら自分に聞いて答えが出るなら出て欲しいといいたいほどだ。
サスケがそんなことを考えている間、ナルトは特に気にしている様子もないようだった。同じ体勢を続けながら、何かを考えているようだった。すると、考えが終わったようで呟くように話した。
「うーん……。そう、なのかな……」
普通に返してきたナルトにサスケは驚いた。嫌いじゃないなら好きかと聞いて答えはそうだと言っている。本当に分かっていっているのかと考えるよりも前に恥ずかしさから顔が赤くなってしまう。頬の熱を感じてどうにかしようと思ってもどうにか出来るものではない。少しでも隠すかのように顔を反らす。
だが、ナルトにはどうしてそんな行動をするのかが分からないらしく首をかしげている。ついでに「どうしたんだってばよ?」と聞いてくるのだから自分の言ったことが分かっていないのだろう。答えてやるかどうか悩んでしまうものの赤くなった頬が悩むことを止めされる。
「お前の言葉、返してやる」
自分の言った言葉を返すと言われて、さっき言った言葉を考える。考え始めれば答えはすぐに見つかったようで、ナルトの頬も赤くなる。自分の言ったことの恥ずかしさを感じながら、サスケの言ったことの意味を知ることになった。頭の中では整理がつかないうちに頬は赤く染まっていくばかり。
たまたま視線が合ってしまうと同時に顔を反らした。恥ずかしいと思っているのは二人共同じで、お互いに頬が赤く染まっている。同じように赤い頬は、元々そうだったのではないかとつい考えてしまうほど。
その考えを中断させたのは、同じ班のサクラの声だった。
「ナルト! サスケ君!」
上から降ってきた言葉に一斉に上を見た。そこにはサクラとカカシがこちらを見て立っていた。どうやら、二人のことを探して来たようだ。ナルトの行動からいつか来るだろうとは思っていたが、このタイミングでというのはよかったのか悪かったのか。心配して「大丈夫?」と聞いてくれるサクラにとりあえず大丈夫だと伝える。それを聞いて安心しながら、これから二人の居る場所に行くとだけ言うと姿が消える。
サクラ達が居た崖の上を見ながら、二人は気持ちを落ち着かせようと必死だった。まだサクラ達がこの場所へ来るまでには時間がある。それまでにどうにかしなければと思いながら、それぞれ違う方を見る。
お互いに内心では必死だが、沈黙が続いてる。その沈黙を先に破ったのはナルトだった。
「なぁ、さっきのってマジ?」
気持ちを落ち着かせようとはしても気になるものは気になる。このままほっておくよりもどうせなら聞いてしまった方がいいと考えたのだろう。それはサスケも同じだったのか、あまり間を空けずに答える。
「お前がそうならな」
サスケに聞いたのに答えはナルトの方に移っていた。それを聞いてまた頬が染まったナルトを見て、サスケも頬が熱くなるのを感じた。ナルトの答えは言葉にされなかったが、赤くなった頬はしっかりと答えを伝えていた。その答えを知ってサスケの頬も染まりお互いに言葉にしないまま答えは伝わりあっていた。
一向に赤くなった頬が戻りそうもない。サクラ達が来るまでにどうにか出来るのかと思いつつも心のどこかではこの答えに喜んでいるようだ。二人の心の中では色々な思いが飛び交っている。とにかく、サクラ達が来るまでにはなんとかしなければと考える。
大切な仲間。だからこそ、命を大切にしてもらいたい。
誰よりも大切な存在。それが貴方なのだから。
fin
「未来航空」の夏鳥様へ差し上げたものです。リクエストは「赤面するナルトとサスケ」でした。
お互いの気持ちを知って二人して赤面してしまって。サクラ達が来るまでに何とかできたのでしょうか。相手の気持ちを知った二人はこれからどのように付き合っていくのでしょうね。