春夏秋冬。忍に定期的な休日などというものはない。任務とは、依頼があって行うものだ。それは、年中無休なのだ。
だからといって休みがないわけではない。立て続けに任務をしては自分達の方が持たない。だから、何人もの忍で任務に行っては休息を取りながらやっている。
上忍にもなるとなかなか休日は重ならない。今日は久し振りに二人の休日が重なった日。
太陽と向日葵
一人暮らしをしているナルトと、家族と暮らしているいの。どちらかの家で過ごそうとなると、大体がナルトの家になる。今日も同じで、朝からいのはナルトの家を訪れていた。
ふと、隣にやってきた気配を感じる。どうしたのかと思ってそちらを見れば、手を伸ばしてその手が髪に触れた。
「アンタの髪って、意外とサラサラしてるわよね」
ナルトの紙を撫でるように触りながら、いのはそう言った。じっと見つめながら、その髪を観察するように手を動かす。
「そうか?」
「うん。見た目は癖がついてて固そうなのに」
ずっと髪を触られていると、なんだかくすぐったくなってくる。それに気付いたのか、手を離していのは言葉を続けた。
「それに、綺麗な黄色よね」
「髪の色はいのも同じじゃん」
「私よりも黄色でしょ、アンタ」
同じ黄色でも、違う色。ナルトのは、はっきりとした原色のような黄色。いのの方は、淡い黄色でクリーム色のような感じだ。いくら黄色と一言で言っても、色というものは少しでも違えば同じとはいえない。黄色であっても、いのとナルトの髪の色の違いのように違うのだ。
いのの言葉を聞いたナルトは、うーんと何かを考えている。しばらくして、ナルトはゆっくりと口を開いた。
「でも、オレはいのの色、好きだってばよ」
今度は、ナルトがいのの髪を見ながら話す。意外な言葉に「この色が?」と聞き返す。まさか、ナルトがそんなことを言ってくるとは予想外だ。綺麗な黄色を持っているナルトと違って、クリーム色のようないのの髪。自分とは少し違う黄色をナルトを好きだと話すが、ちょっと不思議な感じだ。
いの自身が自分の髪の色をどうと思っているわけではない。ただ、ナルトがそう言ってきたのが不思議で。加えて「いのの色って、淡い黄色で優しそうな感じがするから」なんて言ってくれる。意外な言葉だけれど、そんな風に言ってもらえるのはなんだか嬉しい。
「それって、私はどうなわけ?」
「いのにピッタリだと思うってばよ」
髪の色で優しそうな感じと言われたけれど、どうやらいの自身のこともそう思っているらしい。言わせたように見えなくもないが、ナルトはきっとその通りに思っているのだろう。普段から嘘をつくような性格ではないことは、十分に分かりきっているのだから。
そんなナルトからの言葉に「ありがとう」と一言お礼を返す。自分のことを良いように言ってもらえれば、誰だって嬉しくなるというもの。それも、好きな人からの言葉であれば尚更だ。
「ナルトの色は、向日葵みたいよね。純粋な黄色だし」
こんなにも綺麗な黄色。その髪の色は、夏に咲くあの黄色い花を連想させる。あの花の黄色も、ナルトのように原色のような綺麗な黄色だったと記憶している。
あ、と何かを思いついたように言葉を漏らす。それから「でも」と続けた。
「アンタは向日葵っていうより、太陽ね」
例えを変更すると「太陽?」と聞き返されたので「そう」と肯定する。どうして、と言いたそうなその瞳に、尋ねられるよりも前に先に答える。
「みんなを照らす光って感じだから」
太陽。それは、この大地の全てを照らす光。太陽がなければ、この世界は暗闇の中に埋もれてしまう。太陽とは、この世になくてはならない光だ。
ナルトは、これまでたくさんの人と出会ってきた。その中で、彼の存在を例えるなら光。出会ってきた人々に光を与えているようだった。光と例えないのなら、太陽と例えるような。ナルトは、そんな明るい光の存在だ。その明るさは、みんなに心地の良い光を与えてくれる。
「それじゃぁ、いのが向日葵だな」
いのの話しを聞き終えて、ナルトがいののことを例える。最初に自分に言われた、向日葵という存在に。向日葵と同じような黄色を持っているわけでもないし、それならばどうして向日葵だというのか。理由が分からずに「私が?」と聞き返した。すると、ニッコリ笑いながらナルトは答えた。
「だって、向日葵は太陽の方を見て育つだろ? だから、オレが太陽ならいのが向日葵なんだってばよ」
向日葵は、ずっとこっちを見ていてくれるからさ。
さらっとそんなことを言ってくるナルトに、驚きと恥ずかしさと、色んなものが交じり合う。顔に熱が集まってくるのを感じてつい下の方を向く。ちら、とナルトの方を見ると、いつもの太陽のようなあの笑顔をこちらに向けている。
ゆっくり顔を上げて、やっと言葉を発す。
「なによそれー」
「違うのかってばよ?」
確かに、ナルトの言うとおり。向日葵は太陽の方を向いて育つ。ナルトが太陽で、いのが向日葵なら、その向日葵はずっと太陽のことを見ていてくれる。いのは、ずっとナルトのことを見ていてくれると、ナルトはそう言いたいようだ。その言葉の中には、いのが好きだという思いと、いのも自分のことを好きでいてくれる自信があるのだろう。
そんなことを言われると、やっぱり恥ずかしい。だけれども、それほどナルトは自分のことを思ってくれている証拠でもある。ナルトがいののことを好きであるように、いのもまたナルトのことが好きで。そんな風に気持ちを伝えられて、自分も好きだと伝えないわけにはいかない。
視線を合わせて、いのは恥ずかしそうに口を開いた。
「しょうがないから、向日葵は太陽を見ててあげる」
それを聞いたナルトは、嬉しそうに笑った。そんなナルトを見て、いのも一緒になって笑う。
太陽と向日葵。ずっと太陽を見ている向日葵のように。
ナルトといの。二人もずっと一緒に。互いに視線を逸らすことなどせずに。
これからも、一緒にいよう。
大好きなキミと。大好きなアナタと。
ずっと。永久に。
fin
「ナルいのfes」様に参加させて頂きました。
お題の「かみ」を「髪」ということで、二人の髪のことを書かせてもらいました。同じようで違う髪の色。