明日は朝八時にいつもの場所に集合。
 そう言われたのは昨日の任務が終了した時。それから時が流れ、集合と言われたその場所その時間に集まった七班のメンバー達。今日はどれくらい待たされるんだろうという会話をすることもなく、珍しく遅刻をしなかった担当上忍。同じく珍しく集合時間に来ていないもう一人のチームメイト。どうしたんだろうという疑問を投げかければ、すぐに答えは返ってきた。



間は




 ナルトとサクラが担当上忍であるカカシに言われたのは、本日は任務なしという旨だった。その理由は、もう一人のチームメイトであるサスケが風邪を引いたからということらしい。今日の任務はないと言われ、二人はそのままサスケの家へと向かった。


「何の用だよ」


 サスケの家に着いて真っ先に言われた言葉。予想はついていたとはいえ、風邪を引こうがどうなろうがこれは変わらないようだ。それを聞いて、どのくらい酷いのかと心配していたのもどこかにいってしまったようだった。


「何って、風邪引いて寝込んでるっていうサスケの見舞いだってばよ」


 言えば「余計なこと言いやがって」とサスケが呟き、サクラは「大丈夫?」と心配している様子だった。ナルトからすれば、いつもと変わらない言葉で心配も消えてしまったけれど、サクラからすればそれだけで心配がなくなるわけではない。


「大丈夫だ。だから帰れよ」

「人が折角見舞いに来てやったっていうのに追い返すのかよ」

「誰も頼んでねぇ」


 頼んでないと言われてしまえばそれで終わりだ。だけど、頼まれていないからと風邪を引いたというチームメイトを放っておく気にもなれない。本人がそう言ったとしてもこっちは心配をして来たわけだ。大体、同じチームメイトなのだからそれくらいして当然である。
 こうして同じ班を組んでいて、互いのこともそれなりに分かっている。現にサスケが大丈夫と口では言っていても本当は辛いだろうということはサクラにもナルトにも分かっていた。大丈夫だと言って心配させないようにしているのだと分かっている。だからこそ、そのまま引き返すなんて二人には出来なかった。


「でもサスケ君、体調があまりよくなさそうだし……少しくらい居てもいい?」


 同じ班で互いのことを知っているのは三人が三人共だ。いくら言っても聞かないであろうという二人の性格をサスケが知らないわけではない。サクラの言葉に「勝手にしろ」とだけ言って、二人を家の中へと入れてくれる。
 今までにも何度か来たことのある家。その数が多いとも言えないけれど、部屋の間取りなども少しくらいは分かっている。台所を借りると言ったサクラは台所に、特にやることもないナルトはサスケの隣に行った。


「人に体調管理くらいしっかりしろって言っておいて、自分がそれかよ」


 いくら相手が病人であるとはいえ、優しい言葉を掛けようと心掛けるわけではないそれは、サスケがいつもと同じ態度だから。ここであえてそんな風にする必要もないだろうとナルトは考えた。


「五月蝿い。引きたくて風邪を引いたわけじゃねぇよ」

「つっても、結果的には変わらないってばよ?」


 言えばサスケは黙る。ナルトの言う通り、結果的には風邪を引いたことに変わりはないからだ。ここで何を言っても言い訳にしかならない。
 何も話さないまま少しの時が経つと、サクラが台所からこちらにやって来た。栄養も摂らないといけないからと言ってさっき台所で作ったものをサスケに渡す。サスケもそれを素直に受け取って口に運ぶ。その様子を見ていると、いくらいつも通りにしていても体調が悪いのに変わりはないんだと改めて思う。
 サスケがそれを食べ終わってからも二人は帰ろうとはしなかった。サスケも帰れとも言わない。同じ仲間だからこそ、こうしているのだ。何かをあえて口に出して言わなくても分かりきっているのだ。

 午後になり、夕方というには少し早いような時間。ナルトとサクラ以外の新しい訪問者がやって来た。
 誰かが来た。気配でそれを察すると「私が出るから」と言ってサクラが玄関の方に駆けて行った。その後姿を見送ってすぐ、玄関の方から声が聞こえてくる。声は複数だったが、そのどれもが聞いたことのあるもので姿を見ずともその場にいるメンバーや今玄関で起きているだろうことが予想出来た。
 一段落ついたらしい会話の終わりを聞くと、廊下を歩く幾つかの音を耳にする。そして、部屋の前には先ほどの声で分かっていたメンバーが並んでいる。


「サスケ君、大丈夫?」


 言うやサスケにすぐ近づいたのは、サスケ達と同期で十班のメンバーであるいの。くっつこうとする様子に「やめろ」という声と「離れなさいよ」という声が掛かる。本人はあまり気にしている様子はないが相手は病人。それが分かっているからか今日はしつこくもせずに引き下がる。
 続いて入ってくるいのと同じ班のシカマルとチョウジは、部屋に入りながら大丈夫かと尋ねてきた。それには大丈夫だと返すと、二人は適当な場所に腰をおろした。


「何でお前等第十班がサスケのことを知ってるんだってばよ?」


 おそらくサスケとサクラも気になっているだろう質問を投げかける。同じ七班である二人がサスケの様子を聞くのは不思議ではない。けれど、いくら同期だからといって違う班のメンバーまでがどうして知っているのか。


「それはアスマがカカシ先生から聞いたからだな。そしたらいのが五月蝿くてよ」


 サスケのことが好きないののことだ。その反応は見ていなくても充分分かる。加えるように「あれは凄かったよね」とチョウジも話しているのを聞けば予想はさほど外れていないだろう。
 つまりは、アスマがカカシから聞いたことをそのままシカマル達に話したということだろう。その結果、予想通りの反応でいのが行くと言い出し、残りの二人は付き合わされたというわけだ。


「風邪引いてるっていうのに押しかけるのも悪いと思ったんだけどよ、どうも聞かなくてな」

「五月蝿いわね、シカマル! 悪いとかじゃなくてお見舞いよ、お見舞い」


 お見舞いという言葉を強調され「はいはい」と受け流すように答えている。それに対してどうこういうのも面倒だということだろう。面倒くさがりやのシカマルなのだから、付いてくるのも面倒だったのだろうが。


「お見舞いって、どうせサスケ君に会いたかっただけじゃないの?」

「何よ。それはアンタでしょ!?」

「私は同じチームメイトだからサスケ君を心配して来たの」

「私だってそうよ」


 軽く口喧嘩を始めようとする二人を、シカマルが抑える。見舞いに来たといっておきながら口喧嘩をされてもサスケが困るだけだろう。それはサクラにもいのにも分かっているのだろうが、ついそういう展開になってしまったのだろう。お互い、親友であると同時にサスケが好きな恋のライバル同士でもあるから。


「サクラちゃんといのって、いっつも変わらないよな」

「そりゃ、仕方ねぇだろ。急に変わっても逆に怖いと思うけどよ」


 確かにそうかもしれないとナルトは納得する。それを聞いた二人がどういう意味だと聞いてきたが、別にと誤魔化しておく。
 それからは適当に雑談を始めた。別の班であるシカマル達もいることから、任務の話になったりと話も広がっていく。あまり話す機会がないために、こういう話をしてみて分かることもある。例えば、迷子のペットということで依頼されるトラは何度も逃げ出しているとか。
 今日一日で大分良くなったサスケも普通に会話に参加している。といっても、元から口数の多い方ではない彼が話すことはあまり多くもないわけだが。いつの間にか、それぞれが楽しく過ごしているようでもあった。


「そろそろ帰った方がいいんじゃないのか?」


 外を見ながらサスケが言えば、そうだなと言って周りも動き出す。意識していなかったからかあまり気付かなかった外は随分と暗くなってきているようだった。
 玄関まで行くと、それぞれ簡単に挨拶を交わす。「お大事に」や「また明日」という言葉。普通のようで、気にかけてくれる仲間がいるからこそ貰える言葉なのだ。帰っていく姿を見ながらサスケは心の中でお礼を言う。

 大丈夫、と心配してくれる仲間が居る。
 気が付けば、傍には大切な仲間が居た。

 その仲間を大切に。これからも一緒に歩いていこう。










fin




リクエスト企画小説で、リク内容は「サスケの風邪ネタで+七班&十班」でした。