一緒に並んで
気持ちの良い天気。綺麗に澄んだ青空は、程良い温かさを運んでくれている。
季節は、春。卒業シーズンといわれた三月が過ぎ、時は桜の花咲く四月になる。
「レッドセンパイ!」
名前を呼ばれて、レッドは振り返る。するとそこには、後輩が笑顔で手を振っている。
真新しい制服。まだ着なれていないのは、見るだけでも分る。
「ゴールド、入学おめでとう」
新入生のゴールドに、レッドはお祝いを伝える。その言葉に、「ありがとうございます」と返しながらゴールドは笑う。
それから、「センパイもおめでとうございます」と、中等部から高等部への進級を祝う。レッドもまた同じように「ありがとう」と笑った。
「やっと、一緒に学校行けますね!」
同じ学校の生徒同士。今までは別々の学校だったから叶わなかったけれど、今日からは同じ学校なのだ。
二人で一緒に通学することが出来る。それをゴールドは、ずっと楽しみにしていた。
「そうだな」
「センパイが卒業してから寂しかったんスよ?」
突然そんなことを言い出すゴールドに、レッドは戸惑った。「お前、友達いるだろ?」と聞き返すと、「いるにはいますけど」という中途半端な答えが出てきた。
いるには、ではなくちゃんといるはずなのだ。それなのに、そんな言い方をすることを不思議に思う。 その疑問も、ゴールドの次の言葉で吹き飛んでしまったが。
「でも、レッドセンパイがいないんだったら、オレには意味ないんで」
普通に話すゴールドをレッドは顔を赤くして見る。
いつだって唐突に何でも言ってくることは、知っているけれど。それでも、いつもゴールドの台詞には驚かされてばかりだ。
「お前、よくそういうことを……」
「本当のことだから仕方ないじゃないっスか」
本当のことって……。そう思いはしたものの、声にはしなかった。それを言ったら次に何を言われるかは大体想像が出来る。
嬉しくないわけではないけれど、恥ずかしいというか。その事実をレッドはゴールドに言いはしないけれど。
「それより、入学式はどうだったんだ?」
さりげなく話題を変えると「あー」と入学式のことを思い返す。それからゴールドは詰まらなそうに口を開いた。
「どうだったもなにも、センパイだって出てたでしょ?」
入学式には新入生や保護者に教職員、そして在校生が出ることになっている。新入生であるゴールドは勿論だが、レッドだって入学式には出ていたのだ。
だから「出てたには出てたけど」と答えれば「なら分かるでしょ?」とゴールドは話す。
「入学式とか、式なんて堅苦しくて……」
加えて校長や来賓の話はやたらと長い。どうしてこんなに長く話が出来るんだと思ってしまうほどに。
そんな入学式はどうだったか、と尋ねられてもおそらく誰に聞いても同じような答えが返ってくることだろう。
「こんな面倒なことなんて、わざわざやる必要はないと思うんスけど」
「そういうわけにはいかないだろ」
ゴールドの文句を聞いてレッドは苦笑いをする。面倒とはいえ、式というものはきっちりやらないわけにはいかないのだ。
そんな入学式も無事に終わったのだから良いだろう。レッドの隣まで並んだゴールドは、そのままレッドの手を掴んで進む。
「ちょ、ゴールド!?」
「センパイ、もう用ないでしょ? だったら早く行きましょうよ!」
用がないとは言ってないんだけどな。レッドは心の中で思う。実際に用はないから良いのだけれど。
笑顔で手を引く後輩の姿につられてレッドも笑う。やっと同じ学校になれたのだ。久しぶりに見た大きくなった後輩と一緒に行くのもいいかもしれない。
「そんなに急がなくてもいいだろ?」
「いいじゃないっスか」
どんどん前へと進むゴールドに合わせて、レッドも足を進める。
だって。
続けたゴールドは、とても嬉しそうに。
「やっとレッドセンパイと一緒にいれるんですから」
今までの分も、一緒にいましょうね?
輝くような笑みには、またそんなことをとは言えなくて。しょうがないから「そうだな」とレッドは答えた。
綺麗な青空の下。どこまでも続く道を二人は走り出す。
まだまだ続く学生生活。
一緒に楽しい思い出を作りましょう?
二人の大切な思い出を。一緒に並んで行ける、この時間に。
fin
pkmn別館でお礼に差し上げたものです。リクエストは「ゴーレで学パロ」でした。
春だったので季節物で入学の話です。やっと同じ学校に通える二人はこれから一緒に登校したりしながら学校に通うのでしょうね。