【やってきた転校生】
今日もいつもと変わらない朝がやってきた。ただ、いつもと違うのは着ている制服ぐらいだろうか。少し前まで着ていた制服と違う制服を着る理由は簡単で、学校を転校することになったからという一般的なものだ。
家を出て歩くのは初めての道。手にもっているのは鞄と小さなメモだ。このメモは学校までの地図であり、迷わないようにとわざわざ目印になるものが書いてある。細かく書いてくれているお陰で迷うこともないだろうが、ここまで心配されるものなのかと少なからず思ってしまったのはついこの間のこと。
「えっと、木ノ葉学園ってここだよな?」
手にもっている地図と目の前にある学校の門に書かれている文字を見比べる。そこには“木ノ葉学園”と書かれていた。どうやらこの学校が今日から通う学校のようだ。間違えているわけではないのを確認すると、門の前に堂々と立つ。
「ここが今日から通う学校か」
鞄を左手で持ち、さっきまで持っていた地図はどこかにしまったのか開いた右手は腰に当てられている。他の生徒と同じように制服は着ているもののその上にも一枚羽織っている。更に、額には羽織っているものと同じうずまきの模様が一つ描かれているハチマキをつけている。その姿は普通の生徒とは違った雰囲気を漂わせていた。
「よしっ! 行くってばよ!!」
学校の門を開いて堂々と入っていく姿。それは彼が身にまとっているもの相応の姿だった。周りの生徒は、彼を見ると一体どういう生徒なのかと不思議そうな視線を向けている。そんな視線を気にもとめずに歩いて行く。
□ □ □
二年A組のクラスでは朝からある噂が流れていた。今日の朝から流れたその噂は、クラスメイトの一人が職員室の前を通ったところでたまたま耳にした話らしい。それはあっという間にクラス中に広がっていた。今、クラスの話題はどこもこの噂のものだ。
「聞いたか? 今日、転校生が来るって話」
窓の近くに集まっている生徒の一人、犬塚キバは早速噂の話を始める。彼も登校してきたらクラスが何やら騒がしいと思い、一人に聞いてみたところ知った話だ。さっき登校したばかりのいつも一緒に居る友達が知っているかと思い聞いてみる。
「今クラス中で話してるやつだよね」
さっきから話してるの聞こえててさ、という彼は秋道チョウジ。どうやら話をわざわざ聞かなくてもこれだけクラスで話をしていれば耳に入ってくるもののようだ。それはキバも登校したときに体験していた。キバが来た時よりも登校している生徒が多いことから、噂の内容もしっかりと分かっているらしい。
「ったく、転校生だからってなんでこんなに騒ぐんだろうな」
そんなことどうでもいいだろとでも言いたげな彼は奈良シカマル。めんどくせーが口癖で面倒なことは嫌いだが、その性格からか面倒でも頼まれたことはしっかりこなす。そんな彼は転校生が面倒な奴でなければいいと思っているのだろう。噂で転校生が来るということは分かっているが、他は分かっていない為どんな奴なのかは分からないというわけだ。
転校生がどんな奴だろうかと所々で話をしているとチャイムが鳴る。チャイムの音を聞いた生徒達はどんな転校生がくるのかと期待しながら席につく。
――ガラッ。
教室のドアが開くと視線は一気に集まる。そこには、このクラスの担任であるはたけカカシの姿があった。
「今日は、このクラスに転校生だ」
転校生という言葉にクラスがざわつく。カカシが入ってくるようにとドアの向こうに居る転校生に動作で示す。
朝から噂になっていた転校生が教室に入ると、いままで見たことのない生徒にクラスの視線は集まる。ただ視線を集めているわけではなく、新しい生徒の姿を不思議そうに見ているもの。他にもこんな派手な格好をしていてどんな奴だと思っているものもある。
転校生は、黒板に向かい自分の名前を書いていく。最後まで書き終えるなりくるりと振り返ってクラスメイトの方を見る。
「オレはうずまきナルトだってばよ!!」
自分の名前を名乗るその姿を生徒達は唖然と見つめる。わざわざ名乗る必要もないというくらいに黒板には大きく名前が書かれている。そして、彼の姿は他の生徒達とは違い派手なものだ。更に名前の後には変わった口癖らしい言葉を言っている。生徒達は凄い生徒が転校してきたものだと内心で思っているのだろう。
「今日からこの学校に転校してきたからヨロシクな!」
はっきりと言われる言葉。生徒だけでなく担任教師まで凄い奴が来たものだと思っているに違いない。今までにないような生徒の登場に驚きを隠せない。これから大変な毎日になっていくんだろうとカカシは思いながらナルトに席を教える。教えられた席につくと、早速近くの奴に挨拶をしているようだ。
「ま、そういうことだから。仲良くするように」
転校生の紹介を終わらせるといつものように連絡事項を伝える。それが終わると生徒は一時間目の授業の準備を始めた。ざわざわとした騒がしさを残しながら。
これから、今までにないような新しい生活が彼らを待っているのだろう。
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