【下駄箱で告白】
昨日の帰りにサクラと話をした。そこで何かが吹っ切れたのか今日のナルトはいつも通りに過ごしていた。とはいっても、変わっていることに気付いていたのはほんの一部だけ。周りからみれば昨日も今日も変わらないといった感じだ。
授業が終わった放課後。今日はこのまま帰ろうと思い、ナルトは下駄箱へと向かった。
「あ、あの……」
靴を履いてあと数歩で玄関を出ようとするところ。一人の少女に呼び止められた。何だろうと思いってそちらを振り向くと、同じクラスの日向ヒナタが立っていた。
「どうしたんだってばよ、ヒナタ」
帰る支度をしている様子でもないヒナタにナルトは疑問を持つ。ここは下駄箱のある玄関。これから帰るのなら此処に居るのも分かるが、そうでないのなら何のようなのだろうか。全く予想が出来ずにただ疑問を浮かべている。
一方、ヒナタの方は何だか恥ずかしそうにしている。えっと、とさっきから繰り返していて何かを言いたいということだけは理解できた。
「えっと、その、あの、私……」
もじもじしているのはいつもと変わらないようだが、どこか違うような気がする。それがますますナルトに疑問を浮かばせた。急かすかのようにナルトは言う。
「用がねぇんなら、オレ帰るけど」
「え、あ、待って!」
なかなか言わないから帰るといえば引き止められる。それほど重要なのかと考える。また引き止められた為、今度はヒナタの方に体を向けてしっかりと向き合っている。早くして欲しいといっているようで、ヒナタも言わなければいけないと心に決める。勇気を出して、言葉を伝える。
「わ、私……ナルト君のことが、す……」
途中まではなんとか言ったものの、最後の言葉では止まってしまう。この言葉が一番重要であり言うのが恥ずかしいものでもある。
続きが気になっているのか、ナルトは「す?」と聞き返してくる。どうやら、今のヒナタの気持ちをナルトは分かっていないようだ。このナルトにそれを期待するのも難しいというものなのだろう。
「す、好き……なんだ。だから、その…………」
やっとのことで最後まで言い切る。ナルトの返事を待つようにナルトのことを見る。でも、ずっとは見ていられないようで視線を逸らしながらチラチラと見ている。
いくらさっきまでは気付いていなかったとはいえ、流石に今の言葉でこれが告白だと気付いただろう。驚いているようで、どうするかと悩んでいるようだ。少し経つと、ナルトはゆっくりとその答えを出す。
「悪いな、ヒナタ。オレってばお前のこと嫌いとかじゃねぇんだけどさ……なんつーの? 付き合うとかっていうのは…………」
曖昧ながらもはっきりとした答えを返す。相手を傷つけないようにと考えて話しているのだろう。ヒナタにもそれが分かって、言葉の続きを考えているナルトに言う。
「ううん、いいの。ありがとう、ナルト君」
お礼を言うと、ヒナタは走って去っていった。その姿を見るとなんだか悪いことをしてしまったような気分になってしまう。だけど、最後に言われたお礼の言葉を思い出してきっと明日からも同じようにすることが出来るだろうと思った。
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