【届けられた手紙】



 教室を出て向かっていくのは下駄箱のある玄関。鞄を肩にかけながら廊下を歩いて行く。もう見慣れてしまったその姿だが、他の生徒よりも目立っているのに変わりは無い。
 下駄箱までやってくると、自分の場所までゆっくり歩く。分かりやすくクラス別で出席番号順となっている下駄箱の場所はもうしっかり覚えている。一つずつ見て数えなくても分かる自分の下駄箱の場所まで行くと、そこで足を止める。
 それは当然、靴に履き替えるために足を止めたわけだ。その為にここまできたのだから間違いではない。けれどここに来たナルトは今、別の理由で足を止めていた。


「何だってばよ、これ」


 ナルトの下駄箱に入っていた一枚の紙。不思議に思いながら反対にひっくり返してみると、疑問というものは消えた。そこには堂々と『果たし状』という文字が書かれていたのだ。
 誰がこんなものを届けたのかは大体予想がついていた。どんな内容が書かれているのかと折られていた紙を広げる。紙には殴り書きをしたような文字が連なっていた。丁寧とはいえないような字は文字の大きさもバラバラ。果たし状という物を送りつけてくるような人が丁寧に文字を書くとも思えないが。
 書かれている文章をナルトは読んでいく。文章には必要なことだけが書かれていて余計なことは何一つ書いていなかった。


『今日の五時。木ノ葉学園の裏の川沿いにある草原に来い。この間の借りはしっかり返してやる。言っておくが、誰にも言わず一人で来い。もしお前が来なかったらお前の友達がどうなっても知らねぇぞ』


 手紙にはそう書かれていた。それを読み終えると、玄関の傍にある時計に視線を移す。時刻は四時三十分を示していた。奴等の言った時間まではあと三十分。


「アイツ等……!」


 手に握られている手紙は、少しずつぐしゃぐしゃになっていく。その折れ目がナルトの気持ちを表しているかのようだ。
 ナルトに用があるのなら自分に直接言えばいい。関係のない他人を巻き込む必要はないだろうと思うが、今ここでそんなことを思っても意味がない。この果たし状を届けたということはもう既に他人を巻き込んでしまっているということだ。ナルト一人を呼ぶ果たし状でも行かないつもりはなかったが、これでは絶対に行かないわけにはいかない。

 時間までまだ三十分ある。此処から指定された場所までは十分もかからない。一度家に帰るという気にもならず、かといってのんびり学校で過ごすという気にもならない。だが、時間が指定されていてはいくら今すぐ行こうと思っても仕方がない。
 とりあえず、それまでの時間は学校で過ごすことにして玄関から離れた。