【一方的】



 果たし状という紙に書かれていた場所と時刻。間違える事無くナルトは約束の時間にその場へ現れた。


「ちゃんと時間通りに来たか」


 この間と同じようにリーダー格の男が話し出す。見渡す限り、あの時と全く同じメンバーでやってきたようだ。
 あんなにやられたというのにわざわざ果たし状を送りつけてくるなんてそんなに悔しかったのかと思うが、それでも勝てないことをする必要などないと思う。勝てないと思うからこそ、こんな卑怯なことを果たし状に書いていたのだろうが。


「当たり前だってばよ。それよりあの果たし状の内容、どういうことだ」


 あの果たし状には「もしお前が来なかったら、お前の友達がどうなっても知らねぇぞ」と書かれていた。それが何よりも許せなかった。他人まで巻き込むやり方はおかしいと思う。
 その文字を見た時はそのままこの場へ着たかったのだが、そんなことをしても仕方ないと思い時間まで何とか学校で過ごしたのだ。今もそのことについて早く知りたいと思う気持ちばかりが先になってしまう。


「どういうこともなにも、そのまんまの意味だ」

「そのまんま、だと……?」


 相手の言いたい事がいまいち分からず聞き返す。すると、目の前の奴等は笑っているようだった。あまりいい予感がしない中で早く答えろと言わんばかりにリーダー格の男を睨む。


「あぁ。今からオレ達はこないだの借りを返させてもらう。だけど、お前は手出しをすんじゃねぇぞ」


 こいつ等がナルトを此処に呼んだ理由は果たし状に書かれていたから知っている。それ読んだ限り、前の戦いで負けたからナルトを倒す為に呼び出したものだと考えていた。
 実際にその通りのようだが、この男は手出しをするなという。戦う為に呼んだだろうと思っていただけにそれはどうなのかと思う。大体、手出しをするなといわれて素直にやられるような人が居るだろうか。当然、ナルトは素直に言う事を聞くつもりはない。


「手出しをするなと言われて、素直にやられるわけねェってばよ!」

「ほぉ……? そんなこと言っていいのか?」


 まるで手出しをすれば何かがあるといいたげな言葉。それに疑問を浮かべるが、すぐに答えは見つかった。


「ナルト!」


 聞こえた声は普段学校で耳にする声だった。声のした方を振り返れば、声の主はナルトの頭に思い浮かんだ人物と一致した。思わず、その名をを呼ぶ。


「サクラちゃん!?」


 目の前にはサクラの他にもいのとヒナタが居る。三人は縄で縛られていて、奴等はその三人を囲むようにして立っていた。
 それを見て果たし状に書かれていた言葉を思い出す。怒りが込み上げてギロリと睨むようにしてリーダー格の男に振り返る。


「テメェ……!!」


 今にも殴りかかる。そんなナルトを止めたのは今睨まれているリーダー格のこの男だ。


「おっと、手出しはするなよ? こいつ等がどうなってもいいのなら話は別だけどな」


 あまりにも卑怯なやり方にすぐにでも倒してやりたい気持ちを抑えこむ。もしここで手を出したなら、こいつ等がサクラ達に何をするか分からない。
 サクラ達を傷つけるわけにはいかない。だから、奴等の言う通りに手出しをすることを諦めた。本当は、すぐにでも倒してやりたいと思う気持ちをなんとか抑えて。

 辺りに鈍い音が鳴り響く。