【同じクラスの優等生】



 午前中の授業が終了して昼休みになった。いつものようにキバ達と昼食を食べる。春らしい暖かな風が吹いているこの場所は学校の中庭だ。


「なぁ。そういやさ、アイツってどんな奴?」


 ナルトが突然言った言葉にキバ達は一斉にナルトを見た。急に視線が集まって、変なことを言ったのかと思ってしまったナルトだったが「誰のことだよ」という質問に変なことを聞いたわけではなかったのだと安心する。
 別に変なことを聞いた覚えはなかったのだが、こうも一斉に見られてしまうと焦ってしまうものだ。キバの言葉にナルトは付け加えるように返答する。


「ほら、えっと……いつも一人で居るっつーか、人寄せ付けない感じの……」

「あーサスケのことか」


 名前を出されれば「そうそう」と頷いている。
 うちはサスケ。二年A組でナルト達と同じクラスの生徒だ。転校してきてから一週間も経てば、学校にも慣れてクラスの人の名前も結構覚えたとナルト自身は思っている。クラスに居れば話すことも当然あるわけで、もうナルトはこのクラスの一人として溶け込んでいるのだ。
 けど、一人だけ関わっていない人が居ることはナルトも分かっていた。話し掛けようと思ったことがないわけではないのだが、人を寄せ付けないような雰囲気がなかなかそうさせてくれなかったのだ。


「簡単に言えば、成績優秀。運動神経も抜群で女子にモテる」


 とても分かりやすく簡潔な説明というのはまさにこういうものだろう。
 キバの説明を聞いたナルトは普通に凄いと思っているらしい。これだけ揃っている人も滅多に居ないだろう。勉強も運動も出来て美形だとくれば女子が騒がないわけがないというわけだ。人は見かけに寄らないなどというが、それでもこんなに揃っている人が居ればそのまま好きになってしまうものなのだろう。


「その女子もサスケにとってはウザイだけみたいだけどさ」

「え、マジで!? せっかく女の子が好きって言ってくれてるのに?」


 聞き返された言葉に「そうなんだぜ」と肯定の言葉を返す。それはモテるからこそ言えることでモテない人にとっては羨ましいものだとナルトとキバの二人で話している。
 その隣では女なんてめんどくせーだけだと思っているシカマルと昼食を食べるのに夢中のチョウジが居る。モテるモテないは別としても人それぞれ捉え方は違うものだ。現にこの場に居るナルト達とシカマルでさえ違うのだから。


「サスケは、学級会長もやってるんだよ」

「本人がやりたくてやってるわけじゃねぇけどな。自然と決まっちまったっつうかな」


 二人で勝手に話を進めていたナルトとキバの間にチョウジが言う。付け加えるようにしてシカマルも話していると、やっと二人の世界から帰ってきたらしい。
 学級会長というのは、正直にいうと面倒なことでもある。どうやって決めるかといえば、立候補を主に推選などで決める。その時にサスケは推選され、本人は断わったのだがどういうわけだか結局やらされることになってしまったのだ。


「まぁ、アイツはお前の言うように人と馴れ合うような感じねぇな。けど、悪い奴でもねぇぜ」


 その言葉に、ナルトは「へぇ」と呟きながらなにやら考えているようだ。おそらくシカマルの言葉をナルトの記憶にある人物と照らし合わせて考えているのだろう。それで納得が出来るのかといえば、納得できるものでもないような気はするが。
 シカマルの説明のように、馴れ合う感じがないというのは見たままの通りだ。悪い奴ではないというのは、どういう感じなのか分からない部分が多いようだがそれは本人が直接確かめるべきだろう。今までにも付き合ってきているからこそ言えるのだ。
 ついでにいえば、シカマルはサスケの性格もナルトの性格も分かっている。ナルトはまだ一週間程度しか一緒にいないとはいえ、この分かりやすい性格はもう把握している。最初から上手くいくとも思えずに、こう答えるのが一番だろうと考えたわけだ。

 その後も色々な話をしていると、午後の授業の予鈴のチャイムが鳴り響く。生徒達が移動し始める中でナルト達も教室へと戻る。