2.




 入学式のあったその日から三ヶ月が過ぎた。クラスの仲間の顔も覚え、新しい学校生活にも慣れてきたところだ。
 昼休みになれば机を並べて昼食を広げる生徒達。購買まで買いに出掛ける生徒もいれば、家から持って来た弁当を広げる生徒も居る。購買の人気メニューを食べるためにチャイムと同時に教室を飛び出す生徒も居るくらいだ。
 そんな光景が見られる中で立ち入り禁止とされている屋上に入っている生徒も居ないわけではない。入学してからまだ三ヶ月とはいえ、入り方が分かってしまえば入るのは容易いこと。授業が終わると昼食を持って屋上に集まっているというわけだ。


「よく毎日毎日変わらねぇよな」

「何が?」


 各自弁当を広げながら昼食を食べていると、キバがナルトに言葉を投げかけた。何が言いたいのか分からず、聞き返せば付け加えるようにして話してくれた。


「だから、相変わらず遅刻してるよなってこと」


 言われれば「ああ」と話の内容を掴む。
 入学式の日、ナルトが遅刻してきたのは言わずとも知られたことだった。それからというものも度々遅刻する様子にクラスの仲間もナルトが遅刻することは認識されている。毎回遅刻するというわけではないが、遅刻をしなかったとしても遅刻ギリギリに来ることがあるくらいなのだ。認識としては遅刻をしてくる人だろう。
 いつでも入学式で遅刻した人という印象を持ってもらいたくはないと言っていたけれど、これでは仕方がない。ナルトが遅刻するということがクラスでは知れ渡っているし、誰に話してもあの時遅刻した人だといえば大体分かってくれるだろう。


「しょうがねぇじゃん。普通に家を出てもチャイムが鳴るんだってばよ」

「それは普通とは言わないだろうが」

「だよな。そうならないように出るのが普通だろ」


 何も学校のチャイムはナルトが家を出る時間に合わせているわけではない。学校のチャイムにナルトの方が合わせるべきなのだ。普通に出て間に合わないのならそれよりも早く出るのが普通なのだけれども、ナルトの考えはそうはならないらしい。それが一般常識から外れているという訂正は、友達の方が先にしてくれている。


「つーかよ、そんなに遅刻してるとめんどくせーことになるぜ」


 そう言ったのは奈良シカマル。遅刻ばかりしていると面倒なことになるというのは、これから先のことだろう。あまりにも遅刻が多ければ進路にも関わるといってもおかしくはない。それ以外にも教師に注意されたりと面倒なことが待っているのは間違いではないだろう。
 そんなことなど全く考えていないナルトは「それは嫌だってばよ」とは言っているものも改善する気配はなさそうだ。それもナルトらしいと言ってしまえばそれで終わりだが、本当にそれでいいものなのだろうか。本人が改善する以外にはどうしようもないことだけれど。


「いつからなワケ? ナルトがこんなに遅刻するのって」


 その質問はナルト自身ではなくナルトのことをよく知るサスケに投げかけられたものだ。サスケは特に考えもせずに「昔からだ」とだけ答えた。
 いつからかなどという細かいことなどは覚えていない。本人に聞いても分からないだろうからとサスケに聞いたのだろうけれどサスケだって詳しくは覚えていない。小学生の頃にはそんな日常があったような覚えがあるのだから、昔と言っておけば間違いではない。それからずっと、変わらないような朝の生活を繰り返しているというわけだ。


「そんな昔からなら、今更言っても無駄かもしれねぇな」

「本人に意識があれば別だけどな」

「ナルトには無理だよな、この様子じゃぁ」


 三者三様の言葉を述べると「どういう意味だってばよ」と暢気に昼食を食べながら尋ねてくるものだから、やっぱりナルトの遅刻がなくなるのは当分無理な話なのだろう。そんな日が来ればいいとは思うものの来るのは難しいだろうというのが結論だ。

 今日もいつもと変わらない一日が過ぎていく。